肺の拡張は両親媒性の肺サーファクタントにより調節される。敗血症や喘息による肺組織での炎症は、サーファクタントの産生を低下させ、肺機能不全を引き起こし重篤な場合は死に至るが、サーファクタントの産生を促進させる有効な治療法はない。本研究では、肺サーファクタントの調節に関わるプロスタグランジン(PG)類を同定することを目的とした。 マウスの気管内に塩酸を投与することで、肺炎モデルを作製した。正常マウスおよび肺炎モデルマウスの気管支洗浄液を採取し、ELISA法にてPG類の産生量を測定した。PGD2およびPGF2αの産生量が顕著に増加していた。肺炎モデルマウスにおいて産生量が増加していたPGD2およびPGF2aの受容体阻害剤を投与し、塩酸誘導性の肺炎モデルを作製した。PGF2αの受容体阻害剤を投与したマウスでは、肺サーファクタントの産生低下を伴う肺炎の悪化が観察された。これらの結果から、PGF2αが肺サーファクタントの産生調節に関与している可能性が示唆された。
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