研究課題
細胞膜受容体とその下流情報伝達の調節機構の解明は細胞生物学・病態生物学的に重大な意義を有する。 受容体型チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinase:RTK) 等多くの受容体はリガンド刺激により細胞膜において活性化され、多数の情報伝達タンパク質と複合体を形成すると共に、陥入小胞を形成し細胞質への小胞輸送が惹起される。 近年、細胞膜受容体による細胞内情報伝達が細胞膜ではなく、この陥入小胞を起点としているという「シグナリングエンドソーム(SE)」仮説が提唱されている。 しかしながら、SEを構成するタンパク質やそれらの翻訳後修飾の動態等、SEの実像は不明である。本研究ではSEの本態解明を目指しており、本年度は効率的なSE単離のための新規手法の開発・改良、ならびにSEタンパク質のサルフェン化ならびにパーチオサルフェン化検出のための実験手法の検討を行った。磁性ナノ粒子を用いたSE単離法の開発について、手技の検討によりSEタンパク質の収率の上昇がみられ、また、予備的なプロテオミクス解析によりSEを構成すると考えられる多数のタンパク質群を同定した。加えて、同定されたタンパク質群が実際にSEに集積しているかを免疫染色等による検討により開始している。また、質量分析でのパースルフィドの検出条件における最適条件の検討を行い、結果を記述した論文をRedox Biology誌より発表した。一方、タンパク質サルフェン化の検出には成功しているが、パーチオサルフェン化の有無については結論が出ていないのが現状である。今後手法のさらなる改良を試みる。
2: おおむね順調に進展している
磁性ナノ粒子を用いたSE単離法の開発は、手技の改良や予備的なプロテオミクス解析を行う段階に移行したこと、加えて、SE構成タンパク質として同定されたタンパク質群の検討を開始していることなどから、順調に推移していると考える。タンパク質サルフェン化ならびにパーチオサルフェン化の検出に関しては質量分析装置での解析条件の最適化が必要であったため、実際の解析は翌年度に行う予定である。なお、上記に関連してパースルフィドの検出条件における最適条件の検討の成果をRedox Biology誌にて発表した。
磁性ナノ粒子を用いたSE単離法のさらなる改良を試みるとともに、検出されたSE構成タンパク質の検討をさらに進める。タンパク質サルフェン化ならびにパーチオサルフェン化の検出に関しては質量分析装置での解析条件の最適化が必要であったため、実際の解析は翌年度に行う予定である。また、SE構成タンパク質の経時的な変化の検証やSE構成タンパク質のリン酸化の検出系の検討を行い、本研究の目的であるSE本態の解明を目指す。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Redox Biology
巻: 21 ページ: 101096
doi: 10.1016/j.redox.2019.101096
FEBS Open Bio
巻: 8 ページ: 1405-1411
doi: 10.1002/2211-5463.12493