近年、多数のRTKを含む細胞膜受容体がエンドサイトーシス後に細胞内小胞を起点として情報伝達を惹起(あるいは維持) しているという「シグナリングエンドソーム(SE)」仮説が唱えられている。受容体に対する刺激により、SE上では情報伝達タンパク質のリン酸化、ユビキチン化、可逆的酸化を含む多様な翻訳後修飾が同時並行的に進行し、一方で、SEを起点として細胞全体への情報の伝播が惹起されると推測される。 本研究ではSEの包括的理解を目指し、1. SEの効率的単離法の確立、2. SE構成タンパク質の網羅的同定、および、3. SEタンパク質の可逆的酸化を含む翻訳後修飾の同定法の確立と継時的定量により、SEの実態に迫ることを目的とした。 本研究の期間である1年半の成果として、1. 磁性ナノ粒子を用いたSE単離法の更なる改良・最適化を行い、現状としては十分使用に耐えうる手法の開発を完了した。 2. この手法により血小板由来増殖因子PDGF刺激に起因するSEに既知の小胞マーカーに加え、多数の情報伝達タンパク質が存在することを明らかにした。3. また、SEに代謝関連タンパク質が集積している可能性を見出し、現在更なる検討を行っている。 4. 東北大医赤池教授・井田助教とともに質量分析による網羅的解析に耐えうるSEタンパク質のサルフェン化ならびにパーチオサルフェン化検出のための実験手法を開発した。 以上とその関連成果を国内外での学会にて発信するとともに、PLOS open bio誌、Redox Biology誌、Biological and Pharmaceutical Bulletin誌より発表した。
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