研究課題
強迫性障害は薬物治療の奏効率が低く、有効な治療法開発には、病態メカニズムの理解とそれに沿った戦略が重要となる。本研究課題では、ドパミンD2受容体のアゴニスト、quinpirole反復投与により、独自の強迫性障害モデルマウスを作製し、その行動変化、神経機能変化の解析を行った。本モデルマウスでは、強迫性障害様の行動である反復行動や思考柔軟性の障害が認められたことに加え、外側眼窩前頭皮質や線条体中央部において興奮性入力が増加していることが明らかとなった。とりわけ、線条体中央部においては神経細胞種選択的な興奮性シナプス機能の可塑的変化が起こることを見出し、アデノシンA2A受容体アンタゴニストであるistradefyllineにより線条体における興奮性入力異常が改善した。さらに、istradfyllineは短期間の投与で強迫性障害様の行動異常を改善させたことから、アデノシンA2A受容体アンタゴニストが強迫性障害の新たな治療ターゲットとなりうる可能性が示唆された。これらの成果は原著論文として発表した。また、現在は臨床知見とモデル動物に共通するもう一つの因子である、活性酸素種(ROS)シグナルの増加についても着目して検討を行っている。ROSシグナルによるVS 内の可塑的変化が強迫症状の発現・治療に関与するとの仮説の下、分子生物学的、行動学的、電気生理学的な検討を行った結果、ROSシグナルの減少により、モデルマウスの強迫性障害様の行動や興奮性シナプス機能異常が改善することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
国際学会での研究成果の発表に加え、原著論文の発表も行い、おおむね順調に進展していると考えられる。
今後は、強迫性障害の病態におけるROSシグナルの関与、およびROSシグナル抑制による強迫症状改善作用の詳細なメカニズムを検討する予定である。
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eneuro
巻: 6 ページ: 0366~18.2019
10.1523/ENEURO.0366-18.2019