研究課題
昨年度に引き続き、本研究課題では、ドパミンD2受容体のアゴニスト、quinpirole反復投与により、独自の強迫性障害モデルマウスを作製し、病態メカニズムの解析、および治療標的の探索を行った。モデルマウスでは、線条体中央部(CS)における活性酸素産生酵素NOX1の発現が増加していることから、本年度は特に臨床知見とモデル動物に共通する因子である、活性酸素種(ROS)シグナルの増加について着目して検討を行った。ROSシグナルによるVS 内の可塑的変化が強迫症状の発現・治療に関与するとの仮説の下、分子生物学的、行動学的、電気生理学的な検討を行った結果、NOX1遺伝子欠損動物では、強迫性障害様の行動や興奮性シナプス機能異常が改善することが明らかとなった。NOX1の発現量は、皮質や海馬などと比較して線条体において顕著に多く、NOX1由来のROSが、タンパク質システイン残基の酸化修飾などを介して細胞内シグナルの挙動に影響を与えていると仮説を立てて検討を行った。その結果、NOX1遺伝子欠損動物では、CSにおけるチロシン脱リン酸化酵素の活性が増加していることが明らかとなった。以上の結果から、NOX1は細胞内リン酸化シグナルに影響を及ぼすことで、モデルマウスにおける強迫性障害様の行動やシナプス機能上の異常の誘発に寄与していることが明らかとなった。現在は、これらの成果を国際誌へ投稿するべく、準備を行っている。
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