本研究では、これまでの研究を通して血管収縮制御への関与を特定したp63RhoGEFタンパク質とともに働く未知のタンパク質を探索し、両タンパク質の結合阻害による化合物質の特定用ツールへの応用を目指した。将来的に阻害因子が特定されれば、p63RhoGEFタンパク質の特定的機能阻害による高血圧治療薬の特定・開発への発展が期待できる。 未知のp63RhoGEFタンパク質との結合タンパク質の特定を目指したことから、p63RhoGEFタンパク質の人工的過剰発現は必須であったが、p63RhoGEFタンパク質の過剰発現には成功した。p63RhoGEFタンパク質との結合タンパク質の特定手法としては各種沈降法が計画され、そのためにエピトープタグやペプチドタグ等付きのp63RhoGEFタンパク質の人工的過剰発現も実行され、その一部において成功した。さらに、化合物のスクリーニングのツールとして、将来的には新たに特定した結合タンパク質との同時発現を視野に入れた酵母細胞内での過剰発現も目指したが、今回は達成できなかった。 一方、p63RhoGEFタンパク質の血管収縮制御への関与については、それまで直接確認はされていなかった生体内における血管収縮の際のp63RhoGEFタンパク質の活性化の確認を目的としたマウスの微小血管を直接使用した実験に成功した。この結果は、p63RhoGEFタンパク質の阻害因子が実際に高血圧を緩和する可能性を強く示唆するものである。 また、p63RhoGEFタンパク質の機能解析の課程において、血管平滑筋収縮作用機序の最下流に位置するミオシンのリン酸化に至るこれまで特定された作用機序とは別の、未知の作用機序の可能性が示唆され、これがRSK2活性型キナーゼを媒体としていることを特定し、Science Signaling誌上に発表した。
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