研究課題/領域番号 |
18H06130
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
浅野 大樹 北里大学, 薬学部, 助教 (90821918)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 網膜疾患 / 血管生物学 / グリア細胞 / 網膜 / 薬理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、後天性失明や視力低下の原因として大きな割合を占める緑内障の新規予防・治療戦略を提案するために、「網膜の神経―グリア―血管相互依存性破綻における、matrix metalloproteinase (MMP) の意義」を明らかにすることを目的としている。本年度の検討により、新生仔期ラット (7日齢) の硝子体内に N-methyl-D-aspartic acid (NMDA) を投与したラット (新生仔網膜神経傷害モデルラット) において、1) 投与 2 日後から視神経節細胞の脱落が、7 日後から毛細血管の退縮が生じること、2) 網膜神経はすでに脱落しているものの血管には未だ傷害が及んでいない投与 2 日後に、MMP 阻害薬 GM6001 (25 nmol) または CP101537 (100 nmol) を硝子体内投与すると、血管の脱落が抑制されること、3) 網膜では投与 4 時間後から MMPのタンパク量および活性が上昇し始め、6 時間後にピークに到達し、48 時間後まで維持すること、4) GM6001 が MMP のタンパク量および活性の上昇を抑制することを明らかにした。更に、NMDA 投与後、血管が脱落する前の網膜において、白血球の浸潤やアストロサイトの活性化が生じることも明らかになってきた。これらの結果より、神経細胞が傷害されると、直接又はグリア細胞を介して間接的に MMP が活性化され、血管の構造破綻を招く可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の検討により、新生仔網膜神経傷害モデルラットにおける血管傷害が MMP 阻害薬によって抑制されること、NMDA 投与 4 時間後から 48 時間後まで網膜における MMP-9 のタンパク量および活性が上昇すること、そして MMP 阻害薬が網膜における MMP-9 のタンパク量および活性の上昇を抑制することが明らかになった。このように、網膜神経が傷害された後の網膜血管の脱落に及ぼす MMP-9 の影響について明らかになりつつあることから、研究はおおむね順調に進展していると判断された
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今後の研究の推進方策 |
網膜神経が傷害された後の毛細血管の脱落に及ぼす MMP の影響については順調に検討が進んでいるので、今後も継続して行う。NMDA 投与後の経時的な MMP のタンパク量および活性化の変化については、免疫染色法及び in situ Zymography 法による検討を追加する。適宜、MMP-2, -9 の産生及び活性化に関与する細胞群を、特異的マーカー [CD45; 白血球, アストロサイト; Glial fibrillary acidic protein (GFAP), ミュラー細胞; Glutamine synthetase (GS)] を用いて免疫組織学的に検討する。
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