研究課題/領域番号 |
18H06151
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
岩堀 聡子 藤田医科大学, 医学部, 講師 (80416164)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | EBウイルス / キナーゼ / リン酸化 / MTA1 |
研究実績の概要 |
Epstein-Barrウイルス(EBV)はガンマヘルペスウイルスに属し、1964年に初めてのがんウイルスとして発見されて以来、長い研究の歴史を持つが、未だに効果的な抗ウイルス薬は開発されていない。本研究では、EBV関連疾患治療の新たな標的としてEBV由来蛋白質キナーゼ(EBV-PK)に着目し、そのリン酸化基質とリン酸化の機能的意義を生化学や分子生物学的手法を用いて包括的に理解することを目的とする。すでに申請者は研究協力者と共にEBV-PKによるリン酸化を細胞内の他のキナーゼによるリン酸化と区別する方法(chemical genetics approach)を開発し、EBV-PKの直接的な推定標的因子として21因子(うち2つの既知標的因子を含む)を同定している。これらのうちMTA1(metastasis-associated protein 1)がEBV-PKのキナーゼ活性を介して分解されることを本年度に見出した。MTA1は非癌部より癌部で、さらに悪性度の高い転移部での発現が高いことが判明している転移関連因子である。EBV-PKは細胞由来cyclin-dependent kinase(CDK)の機能ホモログであり、MTA1のリン酸化を介した分解機構が細胞機能として保存されている可能性は高い。本研究の成果および今後の進展により、ウイルス学の枠に留まらず、非癌部と癌部におけるMTA1の量の変化と分解メカニズムとの関係についても明らかにできると考えている。また、上記推定標的因子のうち、スプライシング因子SF3B1についてもヒト培養細胞内でEBV-PKとの共発現によりリン酸化されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は10月に採択された一年目である。chemical genetics approachにより見出されたEBV-PK推定標的因子の評価を行った。EBV-PKとMTA1のヒト培養細胞での共発現の結果、EBV-PKのキナーゼ活性に依存してMTA1量が減少すること、そして、プロテアソーム阻害剤(MG132)の添加によりそのMTA1量が回復することを見出した。このことからEBV-PKによるリン酸化がMTA1の分解を促進することが示唆される。加えて、スプライシング因子SF3B1がヒト培養細胞内でEBV-PKとの共発現によりリン酸化されることをすでに確認している。ただし、EBV溶解感染細胞におけるMTA1およびSF3B1のリン酸化の誘導はまだ確認できておらず、早急に進める必要がある。また、残りの17因子についても解析を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
EBV-PKによるMTA1の分解機構解析を下記の項目で行う。 (1) MTA1のEBV-PKによるリン酸化部位の決定、(2) MTA1の分解における蛋白質の分解シグナル(ユビキチン化)の関与の検討、(3) ユビキチン化部位及び責任ユビキチンリガーゼの同定、 (4) EBV溶解感染細胞でのMTA1の動態解析、(5) MTA1の分解とEBウイルスの増殖能の調査。 一方で、残りのEBV-PK推定標的因子についても引き続き評価を行う。そのうち、スプライシング因子SF3B1がヒト細胞内でEBV-PKとの共発現によりリン酸化されることをすでに確認しており、そのリン酸化部位を上記のMTA1の場合と同様に同定する。他の因子についても遺伝子のプラスミドへのクローニングおよびEBV-PKとの共発現、あるいは市販抗体の購入によりウイルス感染細胞におけるリン酸化の確認等行う。
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