研究課題/領域番号 |
18H06157
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
仁平 直江 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (40589470)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | DNA損傷応答 |
研究実績の概要 |
癌は細胞の自律的増殖能の獲得によって引き起こされる難治疾患で、現在の死亡原因の第1位を占めていることから、もっとも克服しなければならない疾患である。細胞の自律的増殖能はアポトーシスなどの細胞死誘導からの回避や細胞周期制御機構の破綻によってもたらされると考えられている。一方で、生体内において癌細胞は免疫寛容能を獲得することで、免疫系による排除機構から回避する。PD-L1 は多くの癌細胞で高発現が見られ、T 細胞やマクロファージに発現するPD-1 に対するリガンドとして、これらの免疫細胞の不活化や増殖抑制を促すことで免疫寛容を引き起こす。我々はこれまでに、PD-L1 がDNA 損傷によって惹起されるアポトーシスを抑制する働きを持つことを示唆する結果を得ている。これまでにDNA 損傷刺激によるPD-L1 の発現上昇や核内移行が報告されているが、DNA損傷下におけるPD-L1 の機能については未だ明らかとなっていない。そこで本研究題では、培養細胞を用いた分子生物学・生化学的実験手法により、DNA 損傷下におけるPD-L1 の生理機能の解明として、アポトーシス誘導の抑制機構を明らかにしたいと考えた。 2018年度は、国立がんセンター研究所の尾野先生との共同研究によるマススペクトロメトリー解析を行い、DNA 損傷刺激の有無の条件下でのPD-L1会合分子の同定を試み、その結果、いくつかのDNA損傷応答関連分子を新規PD-L1会合タンパクとして同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年7月より11月まで出産・育児のため、研究を中断したことによって、研究の進捗状況が遅延したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、核内に移行したPD-L1がどのようにアポトーシス誘導の抑制に関与しているかを明らかにする為に、DNA損傷刺激下の核内において特異的にPD-L1と結合する分子の同定を試みる。国立がんセンター研究所の尾野先生との共同研究により、マススペクトロメトリー解析を行い、DNA損傷刺激の有無の条件下での核内結合分子を定量比較し、DNA損傷下に結合が増強する分子を同定する計画である。同定された分子については、培養細胞を用いた会合実験を行う。また、DNA損傷下の細胞内局在にも着目した解析も行う計画である。 同時に、DNA 損傷下における核内でのPD-L1 の機能を明らかにするための手掛かりを得る為に、RNA シーケンス(RNA seq)解析を行い、PD-L1 の欠失によって発現の変化が見られるアポトーシス関連遺伝子を同定する。
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