平成31年度交付申請書に記載した研究実施計画に基づき、従来法を辺縁70%カバーとし、従来法と多段階照射法の線量分布を比較検討した。まず1回目の照射は辺縁60%カバー(高線量集中照射)、2回目は辺縁70%カバー、3回目は辺縁80%カバー(均一照射)の多段階照射法を試験案Aとして立案した。5症例を対象に線量分布を比較検討した結果、従来法と試験案Aは同等と思われ、その理由として1回目の高線量集中照射と3回目の均一照射の線量分布が相殺され2回目の辺縁70%カバーと同様になったのではないかと考えられた。線量分布は同等だが試験案Aは腫瘍の経時的変化のリスクを低減できメリットがあると考えられた。 次に多段階照射の線量分布改善を目指し試験案Bを立案した。試験案Bでは1回目は辺縁60%カバー、2回目は辺縁65%カバー(やや高線量集中照射)、3回目は辺縁70%カバーを採用した。また腫瘍の経時的変化を考慮し、1回目の照射における計画的標的体積(PTV)は肉眼的腫瘍体積(GTV)、2回目の照射ではPTV=GTV+0.5mm、3回目の照射ではPTV=GTV+1mmと設定した。10症例を対象に解析した結果、試験案Bは従来法と比べ正常脳が照射される体積は少なく、従来におけるPTVに相当するGTV+1mmの領域に対する平均線量・最大線量は高く線量集中性を改善したが、最低線量に関しては従来法の方が高値であった。これはGTV+1mmより狭いターゲットに対して1・2回目の照射で急峻な高線量集中照射を採用しているためなのではないかと推察された。試験案Bも試験案Aと同様に経時的変化の点から有利であると考え、局所制御向上および放射線性脳壊死のリスク低減に有用となる可能性があると考えられる。今後さらに検討を積み重ね、後に臨床試験として有効性評価を目指す予定である。
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