研究課題
本研究はapoptosis耐性の膵癌に対してnecroptosisを誘導し、治療抵抗性を克服する新規治療法を開発することを目的とし開始された。昨年度より開始していたヒト膵癌切除標本を用いた免疫染色の解析をさらに進め、本年度は、necroptosisの実行に必要なRIP3およびMLKLは、正常膵と比較して、膵癌組織で高発現しており、MLKLの発現は、腫瘍中心部よりも浸潤先端部で有意に強いことを確認した。また、昨年度明らかにしたヒト膵癌細胞株、KPCマウス由来の膵癌細胞でのnecroptosis誘発方法を利用し、本年度は、膵癌細胞の遊走・浸潤能を、apoptosisを来した膵癌細胞に由来する上清は促進しないが、necroptosisを誘導した膵癌細胞由来上清は促進することを示した。さらに、昨年度にはCXCL5受容体CXCR2の発現は膵癌細胞でupregulateされていることを示し、選択的CXCR2阻害薬 SB225002は、necroptosisによって強化された癌細胞の遊走・浸潤能を抑制することを明らかにしたのに加え、本年度は、siRNAを用いた膵癌細胞のCXCR2 knockdownも細胞の遊走・浸潤能を抑制し、さらに、組換えヒトCXCL5は、膵癌細胞の遊走・浸潤能を強化することを示した。以上から、膵臓癌浸潤先端部のnecroptosisが、CXCL5-CXCR2軸を介して癌細胞の遊走・浸潤を促進すると考えられ、原著論文として発表した。Necroptosis誘導は、apoptosis耐性となった膵癌に対する有効な治療手段と考えられるが、本研究ではnecroptosisには癌細胞遊走・浸潤能を促進する側面も存在していることが明らかにされ、今後CXCL5-CXCR2軸を遮断しながらnecroptosisを誘導する具体的治療方法を検討していく方針である。
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PLOS ONE
巻: 15 ページ: e0228015
org/10.1371/journal.pone.0228015