研究課題/領域番号 |
18H06166
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田中 貴之 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40823290)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 肝内胆管癌 / エピネフリン / 神経微小環境 |
研究実績の概要 |
肝内胆管癌は、一般に予後不良である。癌組織は癌細胞を取り巻く環境との相互作用により癌特有の微小環境を形成している。なかでも神経微小環境は自律神経を介して癌促進に大きく関わっていることが近年報告されている。当院で切除した肝内胆管癌において神経マーカー染色と臨床データとの関連および自律神経シグナルが細胞増殖に関与するか検討した。 【マウスモデルの構築】in vivo実験ではC57BL/6-Jマウスの胆嚢内にYAP/AKT/SBプラスミド100マイクロリットルを注入し、プラスミドの組成内容はYAP211.25μg、AKT11.25μg、SB transpose2μgが入った溶液を5%glucoseで適宜薄めて95μlに作成し,5μlのjetPEIを加えたものとした。これについては手技の問題もあるが、安定したマウス作成に難渋している。 【切除標本における神経染色検討】癌部と非癌部のperipherine染色面積陽性率について、癌部:非癌部=2.47%:0.25%(p<0.001)と有意差を認め、癌部における神経の肥大を認めた。さらに臨床因子との検討を行ったが、腫瘍マーカーや病期分類との相関は認めなかったものの、実際の生存期間と癌部における神経面積の間には負の相関を認め、染色面積陽性率の中央値2.5%未満と2.5%以上で生存期間を検討すると、染色面積陽性率が高い群ほど生存期間が低いことがわかった(p<0.05)。 前年度から引き続き安定したマウス作成に難渋している。 【考察】癌周囲における神経肥大は肝内胆管癌における生存期間に影響し、そのメカニズムには自律神経の関与が示唆された。マウスモデルについては死亡時期が大きく異なるなど、安定したマウス作成に時間がかかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の目的は、胆管癌と神経浸潤の状況を把握し、安定した肝内胆管癌マウスモデルを構築することであったが、マウス構築に時間を要し、マウスモデル作成については手技の安定や安定した肝内胆管癌モデルの作成に難渋している。また、ADRB2阻害薬(ICI 118,551)を研究代表者が留学していたアメリカのラボから納品してもらう手筈に時間を要しており、阻害薬投与の実験は進まない状況であり、そういった点で、当初の予定よりも遅れている。しかしながら、摘出標本における癌部・非癌部に対するperipherine染色(神経マーカー)については、100倍視野で無作為5視野を選択し神経の面積比率を算出し、臨床因子との関連性について検討した結果、神経染色の範囲と予後との相関関係を見出した。そういった点で、当初の予定よりも遅れているものの、肝内胆管癌と神経との関係を見出すという点については本研究目標の第1段階をクリアしているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果をもとに、神経微小環境(交感神経亢進状態=ストレス負荷状態)と肝内胆管癌が研究責任者が膵癌と神経微小環境について報告(Renz BW, Tanaka T et al. Cancer Cell 2018) したように神経との関連性が示唆されたが、今後はもっと詳細な検討を行う。 1)in vitro実験では、まずは、エピネフリンの適正濃度を検討し、適正濃度が決定したら、細胞株を刺激した際の遊走能や浸潤能、及び放出神経成長因子の検討を行い、さらにその阻害実験についても検討する。PCRにより、シグナル伝達のメイン経路を特定し、シグナル経路の阻害と神経成長因子の阻害実験をおこなうことで、そのシグナル同士がいかに相互作用するか検討する。 2)in vivo実験では、これまでは理想的なモデルである自然発癌による肝内胆管癌マウスモデルの作成をおこなってきたが、手技安定に時間を要するようであれば、NOD/SCIDマウスにストレス負荷をかけ、また同時にADRB2阻害薬(ICI 118,551)を投与することによるレスキュー実験を並行して行うといった方法への変更も検討する。
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