研究実績の概要 |
肝内胆管癌におけるアドレナリン受容体(ADRB)を介した神経微小環境の関与とその治療標的の可能性を検討した。 In vitro実験で、肝内胆管癌細胞株(HuCCT)に対し、無血清培地群とノルエピネフリン負荷(NA)群に分け、細胞増殖、アドレナリン受容体(ADRB1,2,3)・神経成長因子(NGF)発現をRT-RCRで検討し、NA群では、1.3倍の増殖効果を認めた。ADRB2発現がNA群で無血清培地群と比較して2倍以上と有意に高く(p<0.05)、NGFの放出量もNA群で2倍以上と有意に高かった(p<0.05)。最終年度ではNGFについてはELISAでも検討を行い、NA群で4倍以上の発現量を示し(p<0.001)、神経細胞(SW10)と癌細胞(HuCCT)と共培養による遊走実験を行った。その結果として、NA群のほうが有意な神経細胞伸長を認めた。 その結果をもとに、肝内胆管癌切除53例を集積し、ADRB2染色、神経染色マーカーであるperipherine染色を行い、臨床因子との関連性について検討した。ADRB2染色において、癌部、非癌部で比較すると、癌部:非癌部=3.98%:0.21%(p<0.001)であった。これをもとにADRB2陽性率が4%以下をADRB2 low群,4%以上をADRB2 high群と分け、患者背景、臨床病理学的因子を比較すると、high群で腫瘍径が大きく(p<0.05)、病気進行 (p<0.05)を認め、peripherine染色陽性率も高い(p<0.05)結果であった。両群間の生存曲線では、high群はlow群と比べ、生存期間が有意に短かった(p<0.05)。 結語として、肝内胆管癌において交感神経刺激はADRB2を介してNGFを放出し、その神経肥大は生存期間に影響する可能性が示唆された。それ故、ADRB2-NGF経路は治療標的の可能性がある。
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