研究課題
本研究は、KDM5Aが骨髄腫細胞増殖を制御する分子機序を明らかにし、さらにKDM5Aを新規治療標的として提示することを目的とした。そこで、骨髄腫細胞においてKDM5Aが制御する遺伝子群を明らかにするため、骨髄腫細胞株をKDM5阻害剤で処理後、トランスクリプトーム解析を行った。そして、KDM5阻害剤でMYC標的遺伝子が低下することを見出した。続いて、KDM5Aノックダウンでも同様にMYC標的遺伝子が低下することを確認し、MYC標的遺伝子の発現はKDM5Aに依存していることを示した。次いで、KDM5A抗体を用いたChIP-seqにより、ゲノムワイドでのKDM5A結合領域を検証した。興味深いことにKDM5AはゲノムワイドでMYCと共局在していた。また、KDM5AとMYCは、主に転写開始点近傍で共局在しており、転写マシーナリー構成因子であるCDK7、CDK9やRNA polymeraseIIとも共局在していた。そして、プロモーターレポーターアッセイにより、KDM5AはMYC標的遺伝子の一つCDK4遺伝子の転写を活性化すること、そして、MYCと相加的にその転写を促進することを明らかにした。CDK4を始めKDM5阻害剤により発現が低下したMYC標的遺伝子の転写開始点近傍は元々高レベルのH3K4me3で修飾されていたが、この修飾レベルはKDM5阻害剤でさらに上昇した。この結果は、過剰なH3K4me3レベルは逆説的に転写を阻害する可能性を示唆した。さらに、新規KDM5阻害剤の効果を骨髄腫細胞株in vivoゼノグラフトモデルを用いて検証した。KDM5阻害剤投与群では優位な腫瘍量の減少および全生存期間の延長を認めた。これらの結果は、今後のKDM5阻害剤を用いた骨髄腫新規治療法開発の可能性を示唆した。
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