研究課題/領域番号 |
18H06168
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
内海 大介 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40551958)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 頭部血管肉腫 / 沖縄 / トランスクリプトーム解析 / 腫瘍特異蛋白 / ドライバー / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、頭部血管肉腫の腫瘍特異的蛋白を、次世代シーケンサを用いた網羅的な遺伝子発現解析(トランスクリプトーム解析)から明らかにすることを目的とする。頭部血管肉腫は、生存期間中央値が1.2年と臨床予後が極めて悪い皮膚悪性腫瘍である。治療薬として近年使用されているマルチキナーゼ阻害薬のパゾパニブも、その効果は限定的であり、効果的な治療薬の開発のためにもさらなる治療標的分子の探索は不可欠である。すでに教室に蓄積されている組織検体のバイオ・インフォマティクス解析をさらに進め、頭部血管肉腫に特異的かつ腫瘍原性の基軸となる蛋白の同定を足掛りに、治療標的となりうる蛋白の特定や腫瘍発生機序の解明を目指す。 平成3O年度は、血管肉腫に高発現、かつ正常組織に低発現な治療標的として適切な抗原選択を行うために、両群の遺伝子発現変動解析を行った。1万サンプル以上の正常組織トランスクリプトームデータを持つGenotype-Tissue Expression(GTEx)より、53種のヒト正常組織コントロールデータを取得し、琉球大学医学部皮膚科が保有する血管肉腫組織16検体のトランスクリプトームデータと比較し、血管肉腫に特異的に高発現する遺伝子を抽出しえた。これまでに解析を行った血管肉腫組織トランスクリプトームデータは凍結標本から抽出したmRNAを用いていたが、解析に供する検体数を増やすため、過去の永久標本ブロック由来のmRNAを用いたトランスクリプトームデータが使用可能か検証を試みた。データは解析に用いることが十分可能な質であったが、データのバイアスが存在するためデータの補正が必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
血管肉腫に高発現、かつ正常組織に低発現な治療標的として適切かつ精度の高い抗原選択を行うためには、血管肉腫検体数とコントロールとしての正常組織データの増加が必要である。しかし、血管肉腫検体については、当初予想したほど組織検体採取、トランスクリプトーム解析が進まず、検体数が増加しなかった。また利用可能な正常組織データを持つパブリックデータベースも新たに構築されておらず、正常コントロールデータを増やすことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
治療標的となりうる血管肉腫特異的抗原選択を行うため、引き続き血管肉腫組織検体の収集をすすめ、抗原候補のさらなる絞り込みを行う。また過去の血管肉腫組織永久標本から得られたトランスクリプトームデータを利用できるよう解析アルゴリズムの構築を進める。血管肉腫は遠隔転移や再発の頻度が高い特徴的な臨床症状を呈する。The Cancer GenomeAtlas(TCGA)の33種類、1万サンプル以上の癌腫のトランスクリプトームデータと血管肉腫データを比較することで、その臨床的特徴の病理学的機序の背景を明らかにする。毛細血管拡張性肉芽腫やカポジ肉腫などの血管内皮の増殖性腫瘍の凍結保存検体を利用し、これもトランスクリプトーム解析を行い、頭部血管肉腫との差分を行い、腫瘍性増殖に関与する分子群の同定を試みる。
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