研究課題
近年、悪性黒色腫に対する免疫チェックポイント阻害薬の臨床応用が急速に進展したことから癌微小環境に浸潤する免疫細胞と癌の相互作用が注目されてきた。中でも、自己免疫疾患で中心的な役割を担っているTh17細胞が腫瘍の増大を抑制あるいは亢進するという相反する報告がされており、特に癌微小環境での役割は不明な点が多い。申請者はTh17細胞が産生するIL-26が炎症部位に血管新生を強力に誘導することを明らかにした。また、癌においてはIL-26がメラノーマ細胞の上皮間葉移行やリンパ管新生を誘導する可能性を示唆する予備データを得ている。そこで、ヒトIL-26トランスジェニック(hIL-26Tg)マウスを用いてマウスメラノーマ細胞株のB16F10-Lucを移植し、3週後に皮下の腫瘍をリセクトして上皮間葉転換マーカー(E-cadherin, Vimentin, N-cadherin)のmRNA発現レベルならびにタンパク発現レベルを解析した。その結果、hIL-26Tgマウスの腫瘍はE-cadherinの発現低下、VimentinおよびN-cadherinの発現亢進が見られ、上皮間葉転換が誘導されている可能性が示唆された。さらに、hIL-26Tgマウス及び野生型マウスからリセクトした腫瘍を野生型マウスの尾静脈から投与し、転移モデルを作製したところ、野生型で得られた腫瘍よりもhIL-26Tg由来のがん細胞は顕著に肺の転移巣を形成し、わずか1週間で肺に生着していることが明らかになった。また、in vitroではマウス及びヒトのメラノーマをIL-26刺激するとin vivoで得られた結果と同様に上皮間葉転換マーカーの動態変化がみられた。今後はIL-26が上皮間葉転換誘導転写因子の発現を亢進するシグナル経路や、上皮間葉転換を誘導するキー分子の同定を試みる。
2: おおむね順調に進展している
Th17細胞が腫瘍の増大を抑制あるいは亢進するという相反する報告がされており、特に癌微小環境での役割は不明な点が多い。申請者はTh17細胞が産生するIL-26が炎症部位に血管新生を強力に誘導することを明らかにした。また、癌においてはIL-26がメラノーマ細胞の上皮間葉移行やリンパ管新生を誘導する可能性を示唆する予備データを得ている。そこで、ヒトIL-26トランスジェニック(hIL-26Tg)マウスを用いてマウスメラノーマ細胞株のB16F10-Lucを移植し、3週後に皮下の腫瘍をリセクトして上皮間葉転換マーカーのmRNA発現レベルならびにタンパク発現レベルを解析したところ、hIL-26Tgマウスの腫瘍はE-cadherinの発現低下、VimentinおよびN-cadherinの発現亢進が見られ、上皮間葉転換が誘導されている可能性が示唆された。さらに、hIL-26Tgマウス及び野生型マウスからリセクトした腫瘍を野生型マウスの尾静脈から投与し、転移モデルを作製したところ、野生型で得られた腫瘍よりもhIL-26Tg由来のがん細胞は顕著に肺の転移巣を形成し、わずか1週間で肺に生着していることが明らかになり、IL-26の高転移能を評価する転移モデルの作成に成功した。また、in vitroではマウス及びヒトのメラノーマをIL-26刺激するとin vivoで得られた結果と同様に上皮間葉転換マーカーの動態変化がみられた。現在はIL-26が上皮間葉転換誘導転写因子の発現を亢進するシグナル経路や、上皮間葉転換を誘導するキー分子の同定を試みている。これらと並行してメラノーマだけでなく、乳がんや他の癌でのIL-26刺激応答についても転移能を亢進するか否か調査を進めている。
昨年度に引き続き、癌微小環境におけるIL-26産生細胞やIL-26依存性機能の分析や悪性黒色腫に対するIL-26を標的とした抗体治療法の有効性と作用点解析を進めながら、IL-26中和抗体の転移抑制効果を検討する。また、IL-26が上皮間葉転換誘導転写因子の発現を亢進するシグナル経路や、上皮間葉転換を誘導するキー分子の同定を進める。さらに、メラノーマだけでなく、乳がんや他の癌でのIL-26刺激応答についても転移能を亢進するか否か調査を進めていく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
The Journal of investigative dermatology
巻: 139 ページ: 878-889
10.1016/j.jid.2018.09.037
https://www.juntendo.ac.jp/news/20190417-01.html