研究課題/領域番号 |
18H06182
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐藤 陽之輔 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (00823311)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 小細胞肺癌 / 神経ガイダンス分子 / Draxin / Neogenin / 発癌 |
研究実績の概要 |
小細胞肺癌細胞に対するDraxin、Neogeninの機能解析のために、ヒト小細胞肺癌細胞H69ARに対してCrisper/Cas9システムを用いたDraxin及びNeogenin遺伝子欠損小細胞肺癌細胞の安定株をそれぞれ作成した。Neogenin遺伝子欠損小細胞肺癌株をHuman Phospho-Kinase Array kitを用いて蛋白のリン酸化レベルのの変化を検討した。結果、cAMP応答配列を介した転写活性化に関わる転写制御因子CREBやPI3K経路に関わるAkt、GSK3βの変動が確認された。他に血圧調節因子のWNK1や熱ショック蛋白のHSP27・HSP60、細胞接着に関与するFAK等のリン酸化レベルの変動が確認された。 次に作成した遺伝子欠損細胞株をWestern blot法を用いて蛋白発現の変化を検討した。結果、Neogenin遺伝子欠損細胞株では、アポトーシスや細胞増殖関連因子としてC-cas3やCaspase9、pHH3、Ki-67の変動が確認された。他に先に述べたp-Aktやp-GSK3β、p-WNK1の変動やリガンドとされるDraxinの変動が認められた。Draxin遺伝子欠損細胞株では、pHH3やp-CREB、p-WNK1等の変動が確認された。 マウスを用いた実験として、皮下に正常の小細胞肺癌細胞と、作成したNeogenin遺伝子欠損小細胞肺癌細胞H69ARをそれぞれ5匹ずつ・100万/300μl移植し、腫瘍増殖能力を検討した。結果、正常に比較して遺伝子欠損細胞のほうがやや重量が重い傾向にあったが、有意差が出るほどではなかった。 Neogeninの細胞外ドメインであるImmunoglobulinドメイン(IGD)及びFibronectinドメイン(FND)をdecoy蛋白質として外注先のsysmex社に依頼し、作成・精製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Crisper/Cas9システムを用いたDraxin及びNeogenin遺伝子欠損小細胞肺癌細胞の安定株それぞれ作成は進行中である。小細胞肺癌細胞株H69ARで先行して作成し、蛋白発現の変動を確認している。他の小細胞肺癌細胞株でも同様な変動がみられるのか確認するため、現在SBC5という小細胞肺癌細胞株でも安定株作成を進めており、評価中である。 マウス実験用のDraxin及びNeogenin遺伝子欠損マウスを実験頭数分確保することは昨年度中にはできなかった。マウス実験の先行実験として、Rag2-Jak3遺伝子欠損マウスを用いて小細胞肺癌細胞株H69ARとNeogenin遺伝子欠損細胞株の皮下移植実験を頭数を増やして再度実験して、腫瘍増殖に差がみられるか検討する。 Decoy蛋白の作成・精製はSysmex社に外注・依頼して精製まで完了した。しかし精製濃度がNeogenin・IGDで通常の半分程、Neogenin・FNDで1/5程度の濃度までしか得られず、実験に用いる濃度として十分かは不明。今年度中に追加で発注する場合は、より精製濃度を上げるためのオプションを追加する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
Crisper/Cas9システムを用いたDraxin及びNeogenin遺伝子欠損小細胞肺癌細胞の安定株の作成と解析は、H69ARで蛋白発現の変動の再現性を確認するとともに、別の小細胞肺癌細胞株SBC5でもDraxin及びNeogenin遺伝子欠損小細胞肺癌細胞の安定株の作成・解析を行う予定である。 マウス実験では、Neogenin遺伝子欠損小細胞肺癌細胞H69ARの皮下移植実験の頭数を増やして再実験を行っている。Draxin、Neogenin 遺伝子欠損マウスの作成も引き続き行っており、実験頭数分が確保できれば、小細胞肺癌株とDraxin、Neogenin 遺伝子欠損細胞株の皮下移植を行う。 Decoy蛋白の精製は成功したため、シャーレ上に培養している小細胞肺癌細胞へ投与し、腫瘍細胞の増殖やアポトーシスへの影響を検討する。細胞の増殖曲線の変化を見るとともに、回収した細胞内の蛋白の解析を行う。またマウスの皮下移植した小細胞肺癌内にdecoy蛋白とnagetive control sampleをそれぞれ直接投与して腫瘍増殖に影響を及ぼすかも検討したい。また以前の研究で作成した、受容体とリガンド間の結合を阻害するとされるDraxin-22-amino-acid-peptideを追加投与する実験も計画している。
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