小細胞肺癌細胞に対するNeogeninの機能解析のために、ヒト小細胞肺癌細胞SBC5に対してCrisper/Cas9システムを用いたNeogenin遺伝子欠損小細胞肺癌細胞の安定株を作成し、Western blot法(WT法)を用いて蛋白発現の変化を検討した。結果、Neogenin遺伝子欠損細胞株では、細胞接着因子であるFAKやVimentin、Snailの減少やE-Cadherinの増加が認められた。またCyclinD1やpHH3の減少も認められ、Neogeninはヒト小細胞肺癌において浸潤・転移や細胞増殖に関与している可能性が考えられる。 Draxin遺伝子欠損小細胞肺癌株H69ARをHuman Phospho-Kinase Array kitを用いて蛋白のリン酸化レベルのの変化を検討した。結果、細胞接着に関与するFAKのリン酸化レベルの変動が確認された。 マウスを用いた実験として、皮下に正常の小細胞肺癌細胞と、作成したNeogenin遺伝子欠損小細胞肺癌細胞H69ARを6匹ずつ・100万/300μl移植し、腫瘍増殖能力を検討した。結果、有意差が出るほどの重量の変化はなく、昨年実施した5匹の結果と合わせても、腫瘍増殖能力に有意な差は認められなかった。 Neogeninの細胞外ドメインであるImmunoglobulinドメイン(IGD)及びFibronectinドメイン(FND)をdecoy蛋白質として作成・精製し、培養中のヒト小細胞肺癌細胞H69ARへの投与実験を行った。10μg/&、20μg/&の投与後、5日目に回収、WT法で蛋白解析を行った結果、IGDを投与した群でアポトーシス関連因子のCaspase3・8・9の軽微な発現減少が認められた。このことから、NeogeninのIGDのdecoy蛋白質の投与によりヒト小細胞肺癌細胞のアポトーシスが抑制される可能性が考えられる。
|