近年、腫瘍内の多様性や不均一性(heterogeneity)はその腫瘍の悪性度や治療抵抗性に関わることが示された。そこで我々は固形癌の腫瘍内における免疫微小環境が腫瘍内不均一性に寄与し、癌を臨床的に悪化させると仮説を立てた。我々はこれまで原発巣腫瘍サンプルのRNA ならびにDNA シークエンスデータを用いて網羅的にゲノム・エピゲノム解析することで、その臨床的意義を解明する手法を確立、そして報告してきた。特に乳癌・大腸癌においては革新的な網羅的ゲノム解析法を確立し、腫瘍内の免疫微小環境が予後と関連していることを明らかにした(論文審査中)。 本研究は消化器癌の、さらなる革新的な網羅的ゲノム解析手法の導入により、転移浸潤における免疫微小環境の役割とその臨床的意義の解明を目的とした。
従来の腫瘍を分割して複数の解析をする手法と異り、本研究では単一のシーケンスデータから複数のパラメターを計測、独自に開発した数理モデル解析基盤を適応した。さらに申請者の所属研究室ならびに協力研究施設であるロズウェルパーク癌センターで採取した腫瘍臨床サンプルに対して次世代シーケエンサー解析を行い、得られたRNA シーケエンスならびにDNA シーケエンスデータに独自の数理モデル解析基盤を適応する。すなわち、革新的なトランスクリプトミクスレベルの解析アルゴリズムを応用し、腫瘍内の免疫微小環境を定量、評価する。またDNA シーケエンスデータを元に腫瘍内のゲノム不安定性を定量し、さらに癌細胞や免疫担当細胞(Tリンパ球やBリンパ球)の腫瘍内多様性(不均一性)をゲノムレベル評価する。それらのデータを元に消化器癌などの固形癌における悪性度の獲得や腫瘍内多様性(heterogeneity)獲得における免疫微小環境の役割とその臨床的意義を解明することを目的とした。
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