本研究の目的は、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の予防のために患者の個別背景を考慮した評価介入方法の基盤を構築することであり、CIPNに関するデータ解析と治療の基盤構築に取り組んだ。 CIPN予防に関して、冷却での予防を実施する際に不織布等で温度の急激な低下を防ぐことで、高いアドヒアランスと不快感の軽減が可能であった。臨床試験データの副次解析を行った結果、冷却の予防効果には影響を与えないことがわかった。このことから一定温度での冷却を行うことで、医療機器の開発による安全かつ安定した冷却システムを構築し、現在医師主導治験を実施している。 冷却に関するCIPNの予防効果については、システマティックレビューを実施し、関連学会等で意見交換を行った。冷却の予防効果に関しては既に2報のシステマティックレビューおよびメタ解析論文が出版され効果が示されており、より広い観点から個別化ケアを模索することとなった。一方でCIPNに対する運動が重要なモダリティとして抽出されたため、システマティックレビューおよびNetwork Meta Analysisを実施した。その結果、高強度の運動介入がCIPNに効果があることが期待される結果が抽出された。また、患者の持つ身体特性がCIPN増悪に影響する可能性が考えられたため、新規観察研究の研究計画立案に着手した。本研究の意義は、CIPNの予防改善について患者にとって負担の少ない方法の開発に貢献することであり、冷却システムの改善や個別化介入法の模索により、患者に最適な治療を提供する基盤が整備されることが期待される。
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