研究課題
我々はこれまでの研究において、免疫沈降法と質量分析法を組み合わせた方法により同定された、THORのプロモーター領域に結合する可能性のある5個の転写因子・転写関連因子に対する確認実験をsiRNAを用いて行ってきた。結果としては、まず5個の転写因子・転写関連因子に対し、個々のsiRNAを用いた発現抑制実験を行い、4個の転写因子・転写関連因子の発現抑制によりTHORの発現が抑制されることを確認した。また、発現抑制実験とluciferase assayを併用した実験では、3個の転写因子・転写関連因子の発現抑制におけるTHORのプロモーター活性の抑制が確認された。以上の結果を合わせて、THORの発現を転写レベルで調整している可能性のある転写因子として、2個の転写因子に絞り込んだ。これらの転写因子は、上記の実験結果はもとより、その組織における発現パターンや過去に知れれている機能と照らし合わせても、THORの発現を転写レベルで調整している可能性が非常に高いと考えられた。また、低分子化合物が細胞増殖に与える影響についてのIncuCyteを用いた網羅的な解析についても、すべての化合物についての解析を終えた。この結果と、予備検討で行った低分子化合物の治療とluciferase assayとqRT-PCRとを組み合わせたスクリーニング解析による結果とを合わせて、THORの転写制御を介して細胞増殖に影響を与える可能性のある化合物の候補を計16個抽出した。
2: おおむね順調に進展している
THORの発現を転写レベルで調整している可能性が高い転写因子・転写関連因子の同定に関しては、免疫沈降法と質量分析法を組み合わせた網羅的なスクリーニングを用いて同定された転写因子・転写関連因子の候補を、siRNAによる発現抑制実験において絞り込むことが出来たと考えている。これらの転写因子は、その組織における発現パターンや過去に知れれている機能と照らし合わせても、THORの発現を転写レベルで調整している可能性が非常に高いと考えられた。また化合物のスクリーニングに関しても、細胞増殖に与える影響についてのIncuCyteを用いた網羅的な解析を含めたすべての解析を終え、16個の化合物を同定することが出来た。これらの2項目はいずれも本年度内の完了を予定されていた項目であり、非常に順調に研究が進んだ結果だと考えられる。しかし、同定された16個の化合物による細胞株を用いた再確認実験については開始するには至っておらず、併せて、自己点検による区分としてはおおむね順調とした。
今後は、まず同定された16個の化合物による細胞株を用いた再確認実験を開始する。具体的には化合物治療によるTHORの発現抑制をqRT-PCR法を用いて確認し、同時にluciferase assay法を併用することによりTHORの転写制御に与える影響についても再確認する。また、化合物治療による細胞株の細胞増殖抑制効果を確認し、これらが確認できれば、動物モデルを用いた再確認実験に移る。同時に、同定された転写因子からのTHORの発現制御に関する詳細なメカニズム解析にも着手する。具体的には、まずChIP-PCRを行うことで、THORのプロモーターに同定された転写因子が結合することを確認する。また、2つの転写因子のTHORのプロモーター領域における互いの結合を中心とした相互作用や関係性を免疫沈降法やプルダウン法を用いて確認する。同時にChIP-seqも行い、2つの転写因子のゲノムレベルにおける結合領域を解析するとともに、それらの領域の重なりについても確認する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Clinical Cancer Research
巻: 24 ページ: 5658~5672
10.1158/1078-0432.CCR-18-0304