研究課題
下記「現在までの進捗状況」に記載の通り、当該臨床研究については研究体制の整備を行うとともに多施設での症例登録を行っている。研究目的である、大動脈弁複合体の解剖が経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation; TAVI) 後の合併症にいかに影響するかについては、ほぼ全症例で術前のCTデータを収集できており、今後、一律化したプロトコールに則り解析を進めていく予定である。栄養状態とTAVIの予後に関する解析においても、Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)、CONUT(Controlling Nutritional Status)スコア、MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)の3つの栄養状態指標をルーチンに測定している。そして、TAVI 施行後の薬物治療に関しても、全登録症例で退院時の薬物治療を登録しており、今後、集積される長期予後データと合わせて検討を予定している。研究成果としてはTAVI後の合併症の新規発症メカニズムを報告している。TAVIの致死的合併症として人工弁留置に伴う冠動脈閉塞が挙げられる。近年では術前の造影CTによる大動脈弁複合体の解剖評価(左右冠動脈高やSinus of Valsalva径など)によって冠動脈閉塞のリスクが層別化できるようになり、その発症率は低下している。一方で、そのような術前の解剖評価を行っても冠動脈閉塞が発生する症例が1-2%程度存在する。我々は本レジストリー登録症例から、無冠動脈大動脈弁尖の強固な石灰化が左冠動脈閉塞に関連する新たなメカニズムを解明し報告した(Kiriyama H, Kaneko H et al. JACC Cardiovasc Interv in press)。
1: 当初の計画以上に進展している
研究初年度にあたる2018年度は本研究を実行するに足るデータベース構築から開始した。その結果、各施設からウェブ上でのデータ登録が可能なElectronic Data Capture(EDC)システムの構築に成功した。引き続き、各参加施設での倫理委員会承認手続きを待って、2018年10月から順次、EDCシステム上での症例登録を開始した。症例登録開始から約半年の段階ですでに200例近い症例が登録されており、今後、さらに約半数の参加施設で倫理委員会承認が終わり次第、症例登録を追加していく予定である。このペースで症例を登録していくことで、予定通りに3年間の登録期間中に1,000症例の登録を行うことは十分に可能であると考えている。また、本研究におけるメインのテーマである大動脈弁複合体の解剖と経カテーテル大動脈弁留置術治療後の合併症や予後との関連についても、登録症例のほぼ全例において術前のCTデータを本学に集めることができており、今後、一律のプロトコールに従って解析を進めていく予定である。
上記のとおり、未だに参加予定施設の約半数で、倫理委員会承認が得られておらず、症例登録が開始できていない状況である。現時点でも症例登録のペース(半年間で約200例)は、目標である3年間での登録1,000例を上回る状況ではあるが、今後、登録施設が増加することでさらに症例登録ペースを上げていくことができると予想される。今後、重要になってくるのが、各施設で行った術前造影CTデータの解析である。造影CTの撮像プロトコールについては各施設に委ねており、腎機能低下のために十分な量の造影剤使用が困難な症例や体動などのために画像のクオリティが解析にふさわしくない症例も一定数存在することが予想される。一方で、近年では従来報告されていたような大動脈弁仮想弁輪径や周囲長や大動脈弁複合体の石灰化などの予後予測因子以外にも様々なパラメータがTAVIの合併症や予後と関連することが報告されており、複数のパラメータを総合し、一律化したプロトコールで術前CTを解析することが必要になる。この点については、プロトコールを最終化できておらず、さらなる検討を要する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
JACC: Cardiovascular Interventions
巻: 印刷中 ページ: 印刷中