高齢化に伴って重症大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)の有病率が上昇することは疫学的に広く知られています。一方、有症候性の重症ASで外科大動脈弁置換術(Surgical Aortic Valve Replacement; SAVR)が必要な症例の約半数で実際にはSAVRが行われていないことが報告され、外科手術が困難なAS症例に対する低侵襲治療の必要性が認識されました。経カテーテル大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation; TAVI)は、SAVRが困難な重症AS症例に対する低侵襲治療として、全世界で急速に普及が進んでいます。最新のランダム化比較試験では、外科手術低リスクのAS症例を対象としても、SAVRに対してTAVIが同等あるいは優位であるとの報告も行われ、AS治療における大きなパラダイムシフトが起きています。しかし、わが国においては、2013年10月にTAVIが保険償還されて以降、すでに約6年が経過しているもののその浸透率は未だに低い状況です。この要因として、TAVIに関するエビデンスの大部分が欧米人を対象としたもので、アジア人(日本人)を対象としたエビデンスが圧倒的に不足していることが挙げられます。以上を背景として、申請者はわが国の実臨床でのTAVI施行症例における臨床エビデンスを確立するため、本邦有症候性重症AS症例に経大腿動脈アプローチでTAVIを施行した症例を対象とした日本国内最大規模となる多施設前向き観察研究(IMPACT TAVI試験)を開始いたしました。2021年3月をもって症例登録を完了いたしましたので、収集したデータの解析、そして最終的な学術成果発表(学術論文)に向けて努力を重ねてまいります。
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