研究課題/領域番号 |
18H06197
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
藤田 浩司 徳島大学, 病院, 特任助教 (80601765)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | ジストニア / 磁気共鳴画像 / 拡散テンソル画像 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
ジストニアの診断は主に症候学に依拠し、臨床医によるばらつきが大きいことが問題となっている。また難治例では淡蒼球内節への脳深部刺激療法が検討されるが、各症例における適応判定や転帰予測のための指標は乏しい。そのため診断や治療に活かせる客観的なマーカーが希求されている。我々は機能的磁気共鳴画像および拡散テンソル画像を用いて、ジストニアの局所脳賦活および白質微細構造の異常の一端をあきらかにした。ついで多変量解析法によって全脳レベルの機能的ネットワークの異常を定量し、局所的な白質微細構造との関連をみいだした。これらの成果から、ジストニアでは脳機能のみならず白質微細構造でもネットワークの変化が生じており診断や治療に活用できるのではないかと着想した。本研究では、拡散テンソル画像に主成分分析のアルゴリズムを応用し、ジストニアを特徴づける白質微細構造ネットワークを解明し、診断および治療に役立つ画像バイオマーカーを開発する。次のことを目的とする。(a)ジストニアにおける白質微細構造ネットワークの同定、(b)同ネットワークと臨床症状の関連、(c)同ネットワークと脳深部刺激療法の効果の関連。それらのうち、(a)について下記の成果を得た。 ジストニア患者群および健常者群の画像データを標準的ソフトウェアFSLで処理し、拡散異方性をあらわすfractional anisotropy(FA)を抽出した。FA データはFSLのアルゴリズムによって白質の解剖学的位置情報を標準化してから解析した。解析にはScaled Subprofile Modeling(SSM)という主成分分析のアルゴリズムを用い、データから主成分を導出した。赤池情報基準が最小となる主成分の組み合わせをネットワークの候補とし、疾患-対照間の有意差をパーミュテーションテストで判定した。またネットワークの信頼性はブートストラップ法により推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジストニア患者および健常者の画像データ登録を行った。ジストニアにおける白質微細構造ネットワークに関する解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(a)ジストニアにおける白質微細構造ネットワークの同定:病型の違いによるネットワークの相違を解析する。 (b)白質微細構造ネットワークと臨床症状の関連:白質微細構造ネットワークと臨床症状の関連を明らかにするため、ネットワークの発現スコアと臨床的な運動・精神機能の相関を判定する。運動機能評価にはBurke-Fahn-Marsden Dystonia Rating Scale(BFMDRS)とUnified Dystonia Rating Scale(UDRS)を用いる。また、ジストニアでは精神機能障害も指摘されていることから、うつの評価をSelf-Rating Depression Scale(SDS)、強迫性神経障害の評価をMaudsley Obsessional-Compulsive Inventory(MOCI)を用いて行う。相関はPearson の積率相関係数で判定する。これにより、白質微細構造ネットワークの発現が臨床所見のどの要素と関連するかを明らかにする。 (c)白質微細構造ネットワークと脳深部刺激療法の効果の関連:ここでは、白質微細構造ネットワークが手術の転帰予測に活かせる可能性を探索する。なお、手術適応自体は本研究とは独立に、臨床的に判断される。ネットワークの発現スコアは術前のものを用いる(術後は刺激電極が挿入されており3 Tesla MRI が施行できないため)。臨床的評価として前述のBFMDRS、UDRS、SDS、MOCI を術前後に行い、それらの差分を算出する。術前ネットワーク・スコアと術前後臨床スコア差分の相関をPearson の積率相関係数で判定する。これにより、術前の白質微細構造ネットワークの発現が術前後の症状変化にどのように影響するかを明らかにする。
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