当年度においては、まずSGLT2阻害薬を製薬会社から提供していただくことに時間を要した。製薬会社との契約であり、研究計画書の精査などで時間を要し、また、海外の会社であることもあり、段階毎に時間を要した。最終的にドイツのベーリンガーインハイムよりエンパグリフロジンを提供していただくことができた(2018年11月)。その間、プロトコール1およびプロトコール2で用いる手技(テールカフシステムによる血圧計測や、経口投薬方法、テレメトリーシステムの挿入など)の練習を行ってきた。 実際の実験プロトコールとしては、Protocol1を開始しており、第一段階の回収が始まっている。Protocol1の主な目的は、ダール食塩感受性ラットを用いた拡張期心不全モデルにおいて、エンパグリフロジンを異なる4つの投薬量に振り分けして、用量に応じた降圧効果を検討することである。これまでに得られたデータ内では、2.5mg/day~20mg/dayのいずれの群においても、無投薬群との間にテールカフで得られた血圧に差はなく降圧効果は認めていない。体重の変化に関して、人の臨床データでは、SGLT2阻害薬により体重が減少することが報告されているが、無投薬群との間で明らかな差は認められていない。現在個体を回収中で、個体が回収されれば、左室心筋重量や肺重量などの投薬による変化、心筋検体におけるBNP値などの計測を行う予定でいる。こういった実験とともに、同時にSGLT2阻害薬の心不全に対する効果を検討した論文が少しずつであるが発表されつつあり、我々の仮説との差異などを検証している。
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