研究課題/領域番号 |
19K21305
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
上村 大輔 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80631340)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 拡張期心不全 / エンパグリフロジン / カルシウム過負荷 |
研究実績の概要 |
当年度においては、実験Protocol1を完了した。Protocol1の主な目的は、ダール食塩感受性ラットを用いた拡張期心不全モデルにおいて、エンパグリフロジンを異なる4つの投薬量に振り分けし、用量に応じた降圧効果を検討することである。今回の実験により得られたデータでは、2.5mg/day~20mg/dayのいずれの群においても、代償性肥大期の後期である17週齢まで無投薬群との間にテールカフで得られた血圧に差はなく、降圧効果は認められなかった。体重の変化に関して、人の臨床データでは、SGLT2阻害薬により体重が減少することが報告されているが、無投薬群との間で明らかな差は認められていない。心不全期直前期での回収であるため、心不全の十分なフェノタイプが出現していない状況であったが、投薬群のいずれの用量においても、肺重量や左室心筋重量について無投薬群との間に差を認めなった。しかしながら、心筋組織におけるmRNAを予備実験として検討したところ、TypeⅠcollagenおよびBNPのmRNA量はエンパグリフロジンの用量に依存して低下する傾向を認めた。これは我々が立てているエンパグリフロジンがNHE1の活性を阻害することにより左室間質の線維化を抑制し左室スティフネスの上昇を抑制する、という仮説と矛盾しない結果であった。ただ、実験で問題となったのは、投薬の有無にかかわらず高食塩食投与群において死亡個体が多かったことである。これは薬物のゾンデによる経口投与が個体の負荷となったことも影響したと考えており、投薬を餌に混合させる方針とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記のようにProtocol1を終了した時点で死亡個体が多かったことから、薬物を高食塩食に混合するように方針と変更し、さらに、Protocolの変更(群をシンプルにして、順番としては最初に血行動態を評価するStudyを行うこととするなど)を行うこととした。このため、さいどベーリンガーインゲルハイムとの契約をし直すこととなり、時間を要することとなった。また、途中、コロナウイルスのパンデミックの状態となり、ドイツに本社があるベーリンガー社の契約の進行が制約されることとなった。最終的に契約は締結されたが、実際に薬物が搬送されて受け取ったのは年度をまたいでおり、2019年度内の実験は開始することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、餌を受け取ったため実験を近日中に新たなプロトコールを開始する予定である。また、その間、最終プロトコールでIn vitroの実験を行う予定であるため、この実験の予備実験を開始しラット新生児の心筋細胞および線維芽細胞の培養実験を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物モデルに対して薬物を投与する予備実験を行ったところ、動物の死亡数が薬物投与に依存せずに多数あった。薬物投与方法に問題があると考え、新たに投薬方法を変更して実験を行う予定である。この際に、薬物の影響企業(ベーリンガーインゲルハイム株式会社:ドイツ本社)と再契約の必要性が生じ、時間がかかった。また、薬物を餌に混入する形となり、企業側が作成してくださることとなり、作成及び輸送に時間がかかったこと、また、コロナウイルスのパンデミックによる影響もあり研究の実施が遅延してしまっている。
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