研究課題/領域番号 |
19K21311
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松原 巧 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (60824836)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 心臓マクロファージ |
研究実績の概要 |
Adrb2およびGpr65に着目しダブルノックアウトマウスの作製を行い、このダブルノックアウトマウスの骨髄細胞を用いて放射線照射を行なった野生型マウスに骨髄移植を行なった。この骨髄移植を行なったマウスでは野生型の骨髄細胞を移植したマウスと比較し生存期間に差はなく、大動脈横行結紮を用いて心不全にした状態でも生存期間に差はなかった。心機能についても両者に有意な差は認められなかった。 予備的知見としてAdrb2ノックアウトマウスを用いた骨髄移植では心機能低下が認められなかったことから、Adrb2ノックアウトが代償的に作用している可能性が考えられ、Gpr65ノックアウト単独の解析も行なった。具体的にはGpr65ノックアウトマウスの心臓マクロファージの分化度についてホールノックアウトマウスを用いたフローサイトメトリー解析と、Gpr65ノックアウトマウスの骨髄細胞を用いた骨髄移植を行なった。 フローサイトメトリーでは、近年報告された心臓マクロファージの新たな分化マーカの発現が低下している傾向が認められ、追加で解析を行い検証中である。骨髄移植を行なったマウスでは生存期間には影響はないが、一定の心拡大傾向が認められたため、追加実験で再現性について検討しており、心不全モデルでの検討も予定している。骨髄移植したマウスでも同じくフローサイトメトリーによる心臓マクロファージの分化度の解析を予定している。1回の骨髄移植でマウスの評価が可能になるには2ヶ月程度の期間が必要になる。 さらにGpr65のリガンドおよびこのリガンド産生に関与する遺伝子についても新たに同定に成功しており、現在その遺伝子についてfloxマウスを用いて検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Adrb2とGpr65に着目していたところ、これらのダブルノックアウトよりもGpr65ノックアウトでより分化に影響が出ることを発見した。Gpr65のリガンドについて検討した結果、Gpr65の上流遺伝子の同定に成功した。現在、この上流遺伝子のfloxマウスを作製しており、数ヶ月以内にこのfloxマウスでの実験が可能になる段階にある。 Gpr65に加えて、その上流遺伝子の発見によって心臓マクロファージの分化誘導に至る経路の一つが明らかになる可能性が高く非常に新規性が高い。当初着目していたnon-coding RNA以上に重要な知見を新たに得られており、想定していた以上の進捗が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在作成中のfloxマウスとGpr65ノックアウトマウスについて心臓マクロファージの分画をフローサイトメトリーにて解析し、さらにRNAシーケンスおよびシングルセル解析を行い、これらのノックアウトマウスにおける分化障害を評価する。 またシグナル伝達経路の下流についても検討し、Gpr65の下流で心臓マクロファージへの分化に必須のnon-coding RNAおよび転写因子の同定を目指す。 具体的には現在既報のGpr65の下流で作用しているタンパクをウェスタンブロットで確認し、その下流で作用しうる転写因子群の中から、現在候補に上がっている分化誘導に関与する可能性の高い転写因子について、in vitroでのノックアウトでスクリーニングを行う。その後、Areg発現が抑制される転写因子についてin vivoでのノックアウトで評価し、分化誘導に必須の転写因子を同定する。non-coding RNAについてもRNAシーケンスの結果を元に、まずはin vitroでのスクリーニングを行い、in vivoでのノックアウトにて評価する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ダブルノックアウトマウスの作製および骨髄移植を行なって生存期間や心機能の評価等については少なくとも半年以上必要であったため、次年度に繰り越しが必要になった。 現在解析しているGpr65ノックアウトマウスに加えて、Gpr65の上流にあると考えられる遺伝子についてfloxマウスを作製しており、そのfloxマウスの凍結胚作製およびフローサイトメトリーやRNAシーケンスを行う計画があり、必要な抗体試薬などが必要になるため、繰り越し分を全て使用する予定である。
|