ナトリウム利尿ペプチド(ANP/BNP)両遺伝子はゲノム上隣接して存在し、その遺伝子産物は血管拡張・利尿作用を持つペプチド性ホルモンであり、心不全重症度指標・心不全治療薬として臨床で頻用されている。我々は不全心におけるANP/BNP の発現を誘導する機序を解明するため、先行研究にてANP/BNP 遺伝子を誘導する650 塩基からなる心不全感受性エンハンサー領域(CR9)を新規に同定した。しかしCR9 が誘導される機序は依然として不明である。本研究において、同定したANP/BNP エンハンサー(CR9)がどのような刺激で誘導されるかを解明することを試みた。 まずは培養細胞レベルで評価するために、CR9領域 650bpにレポーター(Luciferase)遺伝子を繋げた配列を培養心筋細胞に導入し、内因性ANP/BNPの発現と高い相関性をもって発光測定でCR9エンハンサー活性を評価できる系を確立した。培養心筋細胞に交感神経受容体刺激や伸展刺激・圧負荷刺激を行い、エンハンサー活性を評価すると、CR9は交感神経受容体刺激・進展刺激・圧負荷刺激のいずれにおいても活性化され、CR9は交感神経受容体刺激・機械的刺激のいずれに対しても応答するエンハンサーであることが示唆された。 次にin vivoにおいてエンハンサーを誘導する刺激を評価するために、先行研究で作成したCR9-Luciferaseトランスジェニックマウスに対して、薬剤性心肥大モデルや薬剤性心不全モデルにおいて、発光ライブイメージングで心臓におけるエンハンサー活性を評価したところ、心肥大モデル・心不全モデルのいずれにおいてもCR9エンハンサー活性は誘導された。以上より、CR9エンハンサーはANP/BNP発現を誘導する様々な刺激に対して感知するエンハンサーであることが示唆された。
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