ロングリードによるゲノム構造異常検出の有用性を検討した。ナノポアシークエンサーは10kbに及ぶリード長を有しており、リピート配列を含むゲノム構造異常の検出が可能と考えられた。今回は既知の構造異常に対して従来法ではより詳細な構造を検出できなかった例に対してロングリード解析を行った。3種類のコピー数異常を認めた染色体異常例では、3カ所のうち2カ所で由来不明の配列が挿入されたtandem duplicationを検出することができたが、1例は検出できなかった。検出できなかった原因として異常部位にリード長よりさらに長いリピート配列が存在しており同定されなかった、あるいはデータカバレッジが不十分であった可能性が考えられた。コピー数異常は重複領域がMb単位と大きく、ロングリード解析ではカバレッジが少ないことからコピー数異常は検出できなかった。また、G分染で認めた均衡型相互転座による表現型異常例では、マイクロアレイ染色体検査でコピー数変化を認めず切断点の同定は困難であったためロングリード解析を行った。G分染で切断点と予想された部位から離れた場所に切断点を検出し、今後FISHによる確認を行う予定である。本症例では検出した切断点に対して切断点付近の長いリピート配列の存在によりダイレクトシークエンスによる確認ができなかった。データ解析で検出された構造異常は偽陽性が多く、解析ソフトの改善が必要であるとともに、検出した各々の確認をどのようにすすめていくべきかの課題が残った。また、今回の解析を通して診断未定の先天異常症候群に対して探索的なロングリード解析を行うことは、さらに困難であることがわかった。
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