ロングリードシークエンスを通して、従来のショートリードシークエンサーでは検出が困難であるコピー数変化を伴わないゲノム構造異常の切断点を検出できた。染色体検査で親には認めない新規の均衡型相互転座t(X;22)を認めた女児例に対してナノポア社のロングリードシークエンサーでの全ゲノム解析を行った。解析パイプラインを改良することにより、研究開始時には検出できなかった切断点を同定することができた。1ヶ所は、正確に切断点の位置を塩基単位で検出し、切断点をはさむPCRによって確認することができた。切断点は共通のリピート配列を認め転座の機序が共通のリピート配列をもとにした組み替えが明らかになった。一方、転座のもう一ヶ所については切断点は検出できなかったため、日本特有の構造多型が存在しているのではないかと考え、現在用いているゲノムリファレンスGRCh38から日本人ゲノムデータベースjMorp(JG2.1.0)にマッピングを変更したところ候補の切断点が検出できた。しかし構造多型はリピート配列を多く含むことから、切断点をはさむPCRでの増幅ができず確定はできなかった。この症例では、1遺伝子が切断されていたが疾患関連候補遺伝子ではなく表現型への関与は不明であった。よって、切断による遺伝子機能喪失ではなく、派生X染色体が不活化することによる量的不均衡が表現型に寄与している可能性が考えられた。本研究により、これまで検出できなかったゲノム構造異常を明らかにすることができた。
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