研究課題
CADASIL (Cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)はNOTCH3遺伝子変異を原因とする代表的な遺伝性脳小血管病である。CADASILは遺伝性脳小血管病では最も頻度の高い疾患で、欧州では10万人あたり4-15人の患者が存在するとされている。しかしながら近年、NOTCH3遺伝子変異が示された症例でもCADASILに典型的な臨床徴候を示さない例が存在することが明らかになってきた。本研究では従来のCADASILの概念に当てはまらない脳血管障害、特にラクナ梗塞についてNOTCH3遺伝子変異が関与している可能性があるとの仮説を立て、国立循環器病研究センターに入院したラクナ梗塞患者を対象としてNOTCH3遺伝子の全シークエンス解析を行い、ラクナ梗塞患者における遺伝的素因を解析した。2011年1月~2018年4月にラクナ梗塞の診断で国立循環器病研究センターに入院となった全1094例のうち、バイオバンクに登録し292例を対象とした。高血圧がなく大脳白質病変 (Fazekas分類grade 2以上)を有する患者または60歳未満の患者の合計85例のNOTCH3遺伝子変異を解析した。合計85人のラクナ梗塞患者のうち、3例即ち3.5%ににNOTCH3 R75P変異を認めた。これは日本人一般集団 (4.7KJPN)と比較し、オッズ比58.2 (95%信頼区間 11.6-292.5)であった。若年発症または高血圧がないにも関わらず白質病変を有するラクナ梗塞患者は従来考えられていた以上に高率にNOTCH3遺伝子変異を有する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究の当初の目的であるラクナ梗塞患者におけるNOTCH3遺伝子多型の保有率の解析は終了し、研究結果はFrontiers in Aging Neuroscience誌に掲載された。
今後はCADASIL以外にも対象を広げ、CARASILをはじめとする遺伝性脳小血管病の遺伝子変異 (HTRA1 /Cathepsin-A /α-galactosidase A /CSF-1R遺伝子など)がラクナ梗塞発症に関与している可能性があるとの仮説を立て、当センターに入院したラクナ梗塞患者を対象として全エクソーム解析による網羅的分子遺伝学的解析を行う。本研究により孤発性ラクナ梗塞において脳小血管病遺伝子変異との関連が認められる可能性があり、ラクナ梗塞の病態理解をより深めたい。
研究成果をFrontiers in Aging Neuroscience誌に投稿中であったため、査読者のコメント次第で追加実験が必要となる可能性があった。また、原稿が受理された際に掲載料として約30万円を支払う必要があった。その後、2020年4月20日にFrontiers in Aging Neuroscience誌に受理された。
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Frontier in Aging Neuroscience 2020 in press.
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