本研究は,高齢心不全例に対する「安全かつ効果的」なリハビリテーションの確立に向け,自立支援用ロボットHybrid Assistive Limb腰タイプ(腰HAL)併用リハビリテーションの効果を検証した。本研究では,慢性心不全例に対するリハビリテーション依頼例の中で,1)要支援/要介護1-3取得者,2)入院前の低身体活動レベル,3)入院後の高度デコンディショニング状態のいずれかを満たす症例を患者登録した。2018年10月より開始し,2020年3月までに28例の患者登録を行った(平均84歳,平均腰HAL実施日数6日)。得られたデータを用いて,腰HAL併用リハビリテーションにて身体機能が改善する症例の臨床的特徴の検証(研究1),ならびに腰HAL併用リハビリテーションの効果をリハビリテーション開始時の栄養学的視点から検討した(研究2)。【研究1】腰HAL併用リハビリテーションにて身体機能が改善する症例は,リハビリテーション開始時に身体機能が低く,低栄養状態にある心不全例であった。この結果は,第3回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会にて学会発表を行った。【研究2】リハビリテーション開始時にControlling Nutritional Status(CONUT) Scoreで評価した中程度~高度(5-12)の低栄養状態を呈する群(15例)では,栄養状態が正常~軽度(0-4)の群(13例)と比較して,背景因子補正後も身体機能の改善が良好であった。慢性心不全例に合併した低栄養状態は,身能機能に異常をきたしやすく,アシスト機能を備えた腰HAL併用リハビリテーションは,リハビリテーション開始時に低栄養状態を呈する慢性心不全例の身体機能改善に有用である可能性が示された。この結果は,第84回日本循環器学会学術集会のチーム医療セッション(コメディカル賞審査講演会)で報告予定である。
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