研究課題/領域番号 |
18H06221
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中塚 賀也 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (40826492)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 2型自然リンパ球 / 特発性肺線維症 / 生命予後 / Regnase-1 |
研究実績の概要 |
本年度は、Regnase-1ノックアウトマウスの肺におけるGroup 2 innate lymphoid cells (ILC2s)の解析と、本学の呼吸器内科で凍結保存している検体を用いて、特発性肺線維症(IPF)患者におけるILC2の解析を行った。まず、IPF患者末梢血中のILC2数をフローサイトメトリーで計測し、生命予後や呼吸機能との相関を検討した(n = 49)。その結果、末梢血中ILC2数は努力肺活量の%予測量と正に相関する傾向があった。また、末梢血中ILC2数1500個/ml以上はそれ未満の群に比して有意に検体採取後の生存期間が短く(P = 0.016)、呼吸機能などを含む多変量解析でも末梢血ILC2数は生存期間に関する有意な因子であった。一方、IPF患者末梢血からILC2を単離し、定量的PCRを行った結果、患者由来ILC2ではRegnase-1の発現量が増加していることが分かった。Regnase-1欠損マウスの肺ではILC2が著増しており、Rag2とのdouble knockout mouseの解析や、competitive bone marrow transferの手法により、この増加が炎症による二次的なものでないことを示した。さらに、Regnase-1欠損ILC2とコントロールのILC2の間でRNA sequencingを行ったところ、Regnase-1欠損ILC2ではTGF-β1やIL-13など線維化に寄与するサイトカインの発現亢進を認めた。以上は、IPF患者末梢血中ILC2数増多は生命予後不良と相関し、Reg1がその線維化促進機能を制御している可能性があるという本課題の仮説を支持するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していたマウスの解析やヒト検体の解析は概ね予定通りに施行することができた。実験の結果、Regnase-1欠損マウスにおけるILC2数増多に寄与する因子としてICOSの同定に至ったことや、Regnase-1欠損ILC2を用いたトランスクリプトーム解析で、線維化に寄与する遺伝子の発現亢進を確認できた点など、計画通りの研究の進展が得られていると考えている。一方で組織学的な検討についてはいまだ条件検討の段階である。以上を総合すると、おおむね順調な進展が得られていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析で、ILC2がIPFの進行に寄与することが明らかになりつつあることから、今後は、そのメカニズムについて解析を進める予定である。一方、Regnase-1が真に肺線維症の病態に寄与しているのか、また治療標的になり得るのか、という点についても、in vitro/in vivoの実験系で検証を行っていく予定である。具体的には、Regnase-1欠損マウスもしくはコントロールのマウス肺からILC2を単離し、ブレオマイシンを気管内投与して線維化を誘導したマウスに移入することで、肺線維症に対するRegnase-1を介したILC2機能制御機構の意義について評価を行うとともに、レトロウイルスベクターを用いてRegnase-1を過剰発現させたILC2を移入することで、Regnase-1の安定化がIPFの治療戦略となり得るかについて検討を行っていく。並行して、トランスクリプトームで同定した因子がRegnase-1の標的であるのか、Luciferase reporter assayなどを用いて検証していく予定である。
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