本研究は、Regnase-1による2型自然リンパ球(ILC2)の機能制御メカニズムと、それが特発性肺線維症(IPF)の病態にいかに寄与するか明らかにすることを目的とした。まず、Regnase-1欠損マウスの肺ではILC2が著増しており、単離したILC2ではIL-13などのサイトカイン産生が亢進していることが明らかとなった。トランクリプトーム解析によりRegnase-1欠損で発現量が変化する遺伝子を網羅的に解析したところ、肺線維症に関連する遺伝子群の発現亢進を認めた。実際、体外で培養したRegnase-1欠損ILC2をブレオマイシン投与後の成熟リンパ球欠損マウス(Rag2-/- Cγ-/-マウス)の肺に移植したところ、コントロールのILC2を移植したマウスに比べ有意な線維化の増悪を認めた。また、トランスクリプトーム解析の結果を用いたpathway解析により、Regnase-1に直接制御され肺線維症と関連する転写因子としてGATA3とEGR-1を同定した。次に、ヒトにおけるRegnase-1とILC2、肺線維症の関係性を評価するためにIPF患者の気管支肺胞洗浄液中(BAL)を用いた解析を行ったところ、BAL中のILC2数と、ILC2におけるRegnase-1発現量に有意な負の相関を認めた。さらに、末梢血中のILC2数をフローサイトメトリーで計測し、生命予後や呼吸機能との相関を検討したところ、末梢血中ILC2数1500個/ml以上はそれ未満の群に比して有意に検体採取後の生存期間が短く(P = 0.016)、呼吸機能などを含む多変量解析でも末梢血ILC2数は生存期間に関する有意な因子であった。以上から、Regnase-1はILC2の肺線維化促進作用を抑制する機能を有しており、IPF患者においてILC2数増多はRegnase-1発現低下・生命予後不良と相関する可能性が示唆された。
|