研究課題
本研究の目的は、糖尿病性心筋症進展のメカニズムとして、酸化ステロールの心筋内への蓄積が及ぼす影響について解析することである。まず8週齢のオス野生型ラット(Wistarラット)にストレプトゾトシン(STZ)腹腔内投与(50mg/kgBW)を行い、STZ誘導糖尿病ラットを作成した。次にコントロール食(糖尿病誘導食、コレステロール比1% (w/w))と酸化ステロール添加食(コントロール食に更に酸化ステロールを0.01% (w/w) 加えたもの)を作成し、STZ誘導糖尿病ラットに16週間の投与を行った。心臓超音波検査による経時的な心機能評価を行ったが、左室収縮機能指標である左室駆出率、拡張機能指標である僧帽弁口血流速波形ともに、コントロール食群と酸化ステロール添加食群で差は認めなかった。一方で、16週間の食餌投与後に心臓MRIを行ったところ、両群間で左室駆出率に有意な差を認めなかったが、酸化ステロール添加食群で左室ストレイン値(global longitudinal strain : GLS)が低値となっており、局所心筋機能障害の可能性が示唆された。両群間で心重量や肺重量に差はみられなかった。一方、酸化ステロール添加食群において、心臓での炎症性サイトカインのmRNA発現は亢進しており、心筋組織への炎症細胞浸潤を認めた。2020年度以降も文部科学省若手研究において、心筋組織での酸化ステロールの局在の評価を行うとともに、ミトコンドリア機能やT細胞などの免疫系細胞への影響を評価していく予定である。
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