研究課題/領域番号 |
18H06226
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渋谷 倫太郎 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (30823059)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 補体 / 刺激性皮膚炎 / 好塩基球 |
研究実績の概要 |
外的刺激に対する皮膚の免疫応答における補体系の関与を評価するため、代表的な刺激因子 である SDS を各種補体欠損マウスの皮膚に反復塗布した。まず、SDS塗布によって皮膚における補体C3の沈着を免疫染色によって確認した。次に、C3欠損マウスではSDS塗布による耳介腫脹に加えて、表皮肥厚ならびに好中球、単球といった皮膚への炎症細胞浸潤が減弱することを確認した。次に、近年免疫調整作用が報告されている補体成分C5aに着目し、C5a-C5aR1経路がSDSに対する皮膚免疫応答に関与するかどうかを検証した。SDSを塗布した皮膚においてC5aが産生されていることをELISA法により確認し、SDSを塗布した皮膚における補体の活性化が示唆された。さらに、C5aの特異的受容体であるC5aR1が欠損したマウスにおいてSDSに対する応答を評価した。その結果、C5aR1欠損マウスでは、C3欠損マウスと同様に、SDSによる耳介腫脹ならびに好中球、単球といった皮膚への炎症細胞浸潤が減弱することを見出した。 一方で、われわれはSDS刺激による耳介腫脹や炎症細胞浸潤は好塩基球を除去することで顕著に減弱することを確認しており、SDS塗布に対する免疫応答が好塩基球に依存することが示唆された。C3欠損マウスやC5aR欠損マウスではSDS塗布による好塩基球浸潤も減弱していたことから、現在われわれはSDS刺激による皮膚への好塩基球浸潤に対して補体系か関与するのではないかという問を立て、検証を進める予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在われわれは、SDSに対する皮膚免疫応答に対する補体系の役割として、特にC5a-C5aR1経路に着目して研究をすすめているが、欠損マウスの繁殖に時間を要しており、十分な個体数を確保してのキメラマウス作製が想定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、どの細胞における C5a-C5aR1 経路が重要であるかを明らかにするため、以下の方法でマウス実験を進める予定としている。1)まず、定常状態ならびに炎症時の皮膚におけるC5aR発現細胞をフローサイトメトリーで確認する。2) 3)次に、放射線照射後の骨髄移植によって、野生型マウスあるいは C5aR1 欠損マウスを各々ドナーあるいはレシピエントとして骨髄キメラマウスを作製し、C5a-C5aR1 経路が放射線感受性の高い骨髄由来細胞で重要か、放射線耐性の間葉系細胞で重要かを確認する。1)のC5aR1の発現結果と、2)の骨髄キメラマウスの実験で候補となるターゲット細胞を絞り、ターゲット細胞の除去によってSDSに対する免疫応答が減弱するかどうかを確認する。最終的には野生型マウスから候補とした細胞を ソーティングし、 C5aR1 欠損マウスへ移入することで、外的刺激に対する応答が回 復するかどうかを確認する予定である。
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