補体活性化成分の一つであるC5aの特異的受容体であるC5aR1を欠損したマウスにおいて、SDSによる刺激性皮膚炎が減弱することが初年度に確認したため、次にどのような細胞におけるC5a-C5aR1経路が関与するのかを検証した。まず、放射線感受性細胞と放射線耐性細胞のいずれのC5aR1が重要であるかを確認するため、骨髄キメラマウスを作製した。その結果、C5aR1欠損マウス由来の骨髄を移植した野生型マウスでは、野生型マウス由来の骨髄を移植した野生型マウスと比較して、SDS反復塗布による耳介腫脹が減弱し、好塩基球などの炎症細胞浸潤も減弱した。この結果から、放射線感受性細胞におけるC5aR1がSDSによる刺激性皮膚炎において重要であることが示唆された。次に、定常状態での皮膚免疫細胞における細胞表面のC5aR1発現をフローサイトメトリーにより確認した。その結果、マクロファージにおいてはほぼ全ての細胞で、好中球、単球、樹状細胞、好酸球、好塩基球においては一部の細胞で発現が確認された。肥満細胞、T細胞においては明らかなC5aR1の発現は確認されなかった。今回C5aR1発現が確認された細胞のうち、好中球、単球、樹状細胞、好酸球、好塩基球は放射線感受性細胞であり、マクロファージは一部が放射線耐性細胞である。われわれは、SDS反復塗布による刺激性皮膚炎が好塩基球依存性であることを初年度に確認しており、今回の検証結果から、好塩基球におけるC5aR1の関与が示唆された。今後の展開として、好塩基球特異的なC5aR1欠損マウスを導入し、さらに検証をすすめる予定である。
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