研究課題/領域番号 |
18H06228
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
金丸 央 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (20823313)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | I型インターフェロン / 悪性黒色腫 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 代謝 / サイトカイン / 自然免疫 / 腫瘍免疫 / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
I型インターフェロン(IFN)は様々な皮膚科疾患の病態において重要な役割を担っている。その中でも特に悪性黒色腫に対しては臨床で使用される薬剤の一つでもあり、重要な抗腫瘍因子として注目されている。さらに、近年の抗PD-1抗体のような免疫チェックポイント阻害薬や、イミキモドクリームのようなTLRアゴニスト等の免疫療法の有効性が報告され、これらの治療成績に影響を与える重要な因子としてI型IFNが注目されている。本研究は皮膚科疾患におけるI型IFN誘導性遺伝子の役割に焦点を当て、これらの遺伝子に重要な影響を与える因子を探索し、その病態における機序を解明することで、診断・予後マーカーとしての可能性を探り、さらに治療応用についての可能性を検討することを目的とした。過去の報告から腫瘍微小環境中においてI型IFN誘導性遺伝子に影響を与える因子が存在することが示唆され、まずこれらの因子の探索を行った。その結果、腫瘍由来の代謝産物の一つによりI型IFN誘導性遺伝子の一部が抑制されていることが分かった。これを踏まえて、これらの因子が腫瘍免疫にどのような影響を与えているかについて、自然免疫を担う重要な細胞である樹状細胞を用いて解析を行ったところ、この因子の濃度依存的に抗腫瘍効果を持つ一部のサイトカインの産生が抑制されることが分かった。そこで、この因子が腫瘍微小環境中の免疫細胞においてどのような影響を与えているかについて遺伝子レベルで網羅的な解析を行い、腫瘍免疫において重要な役割を担っている可能性のある転写因子を特定した。現在この転写因子を欠損させたマウスを作成中であり、腫瘍免疫においての具体的なメカニズムを解析することで、具体的な治療応用についての可能性を検討する方針としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
I型IFN誘導性遺伝子の一つであり、またTLRアゴニストでも誘導されるBATFファミリーが腫瘍抑制効果を持つという点で重要であるという予備的結果を申請者は以前得ており、まず腫瘍微小環境中においてBATFファミリーに影響を与える因子の探索を行った。その結果、腫瘍細胞に由来する一つの代謝産物の存在下で、BATFに代表されるI型IFN誘導性遺伝子が抑制されることが分かった。そこで、抗腫瘍免疫を担う重要な免疫細胞の一つである樹状細胞に注目し、具体的にマウス骨髄由来の樹状細胞を用いることで、この因子の存在下でのサイトカイン産生について解析を行ったところ、樹状細胞において重要な抗腫瘍効果を持つサイトカインの一つがこの因子の濃度依存的に低下していることが分かった。この結果を踏まえ、この因子が腫瘍免疫細胞においてどのような影響を与えているかについて調べるため、マウスの樹状細胞を用いて遺伝子レベルでマイクロアレイを用いて網羅的な解析を行った。その結果、腫瘍免疫において重要な役割を担っている可能性のある一つの転写因子を選出することができた。現在この転写因子を欠損させたマウスを作成中であり、解析を継続する方針としている。また、この転写因子に関連して、申請者は腫瘍微小環境における代謝系に注目しており、腫瘍細胞自身の代謝系の異常や生活習慣病に代表される生体内の代謝系異常の蓄積による腫瘍免疫全体への影響について注目し解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイを用いた網羅的解析により選出された上記の転写因子について、遺伝子欠損マウスを作成し野生型マウスを比較することで、腫瘍免疫における役割について解析を進める方針としている。さらに、上記の転写因子がヒトのサンプルではどのように発現しているのか、実際に悪性黒色腫を中心とした腫瘍組織を用いて解析を進める方針としており、現在臨床サンプルを集積中である。これらの結果を踏まえ、診断・予後マーカーとしての可能性を探り、さらに治療応用についての可能性を検討する方針としている。
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