研究課題/領域番号 |
18H06233
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
比嘉 涼子 大分大学, 医学部, 助教 (10819642)
|
研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
キーワード | ニューロメジン B / ベージュ脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では独自に作製したNMB遺伝子欠損マウスを詳細に解析することで、ベージュ脂肪細胞の増殖・活性化機構におけるNMBの関与について明らかにすることを目的としている。 本年度は、予備実験としてF2世代のマウスを用いて、普通食摂餌下および高脂肪食摂餌下における野生型マウス群とNMB遺伝子欠損マウス群の体重変化について検討を行なった。その結果、通常食摂餌下では野生型マウス群とNMB 遺伝子欠損マウス群間において有意な体重差は認められなかった。一方で、高脂肪食摂餌下においては、野生型マウス群に比べNMB 遺伝子欠損マウス群では体重増加量の有意な減少が認められた。さらに、高脂肪食摂餌下における両マウス群の褐色脂肪組織、皮下脂肪組織、内蔵脂肪組織および肝臓の組織重量を解析したところ、野生型マウス群に比べNMB遺伝子欠損マウス群において皮下脂肪組織重量が有意に減少していた。また、血清中のレプチン濃度についてもNMB遺伝子欠損マウス群で有意な低下が認められた。一方、摂食量については両マウス群間で顕著な差は認められていない。このことから、NMB遺伝子の欠失によって高脂肪食摂餌による脂肪蓄積の抑制またはエネルギー消費の増大が示唆された。褐色脂肪細胞およびベージュ脂肪細胞の活性化は全身におけるエネルギー代謝量の増加や肥満などの代謝異常を改善する作用を持つことが報告されていることから、NMB遺伝子の欠失によってこれらの熱産生細胞が活性化している可能性が示唆される。今後、NMBと褐色脂肪細胞およびベージュ脂肪細胞との関連をより詳細に検討していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
F2世代を用いた解析により、NMB遺伝子の欠失によって高脂肪食摂餌下における体重増加量および脂肪蓄積量の減少を明らかとし、NMBがエネルギー代謝調節を制御している可能性を示唆する結果を得た。現在、NMB遺伝子欠損マウスのF3世代を得ており、今後の解析には十分な数を獲得している。また、NMB遺伝子欠損マウス由来の褐色脂肪前駆細胞株およびベージュ脂肪前駆細胞株の樹立にも取り掛かっているためおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
in vivo 実験においては、高脂肪食摂餌下における体重増加量の減少についてさらに個体数を増やして再現性を確認する予定である。また、野生型とNMB遺伝子欠損マウス間で摂食量やエネルギー代謝量、行動量、糖代謝異常について差が認められるかを解析する予定である。さらに、褐色脂肪組織、皮下脂肪組織、内臓脂肪組織の形態を比較し、寒冷刺激によるベージュ脂肪細胞の活性化を熱産生タンパク質であるUCP1の発現を指標に両マウス群間で解析する。さらに、NMB遺伝子欠損マウスにNMBを投与することにより、得られた表現型が消失・減弱するかを解析し、見出した生理機能がNMBの内因性の機能であるか検討を行う予定である。 in vitro 実験においては、野生型およびNMB遺伝子欠損マウスから、ベージュ脂肪前駆細胞が豊富に含まれているとされる鼠蹊部皮下脂肪組織の間質血管画分(SVF)を単離し、培養後、 in vitro にて解析を行い、野生型マウス由来ベージュ脂肪細胞とNMB遺伝子欠損マウス由来ベージュ脂肪細胞間でUCP1などのベージュ脂肪細胞のマーカー遺伝子の発現やミトコンドリアの活性化について検討を行う。さらに、野生型およびNMB遺伝子欠損マウスから不死化ベージュ脂肪前駆細胞を新たに樹立し、分化前と分化後の遺伝子発現を網羅的に解析することで、NMBによって発現が制御されている分子についての解析を行う予定である。
|