研究実績の概要 |
本研究はATP産生関連代謝をコントロールすることで既治療法に対して耐性を獲得したがん細胞を再度感受性のある細胞に戻すことが可能ではないかと仮説を立て、これを検証すると同時に優位代謝が治療の標的となりうるかを検討することを目的としている。その上で現在以下の研究内容まで進めている。 ヒト腺癌における手術検体および細胞株を用いた代謝関連分子プロファイリング - TCGA(The Cancer Genome Atlas)データベースを用いてヒト肺腺癌症例において代謝関連分子プロファイリングを行なった。さらにヒト肺腺癌細胞株(PC-9, A549, NCI-H441など)をもちいて代謝関連(glycolysis、ミトコンドリア、β酸化などを予定)遺伝子、タンパクプロファイリングを行っておりGlycolysis型、OXPHOS型に分類可能である可能性を得た。以上の結果を踏まえて優位代謝別の代謝拮抗薬を試している。 以上の結果は、肺腺癌細胞もATP産生関連代謝別に分類が可能であることを示せており、当初の代謝の変化別にコントロールしていくことが実現可能であることを後押しする結果である。実際の拮抗薬の効果や、抗がん剤使用による代謝の変化に関してはこれから調べることとなるが、上記結果なくしてはそれらの実験に進む意義は乏しい。そのため、次に研究を進めていく根拠となる結果が得られていることは非常に意味があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(2年目)以降 2、抗がん剤治療による代謝性質の変化の評価 - 抗がん剤治療により代謝型が変化するかを治療前後の細胞株および可能であれば治療前後のヒト生検組織を用いて解析する。特に細胞株においては、Glycolysis型からOXPHOS型に変化して耐性を獲得することやOXPHOS型のものは抗がん剤耐性を示して代謝型は変化が乏しいことが期待される。
3、優位代謝を標的とした治療法検討 - 細胞株においてそれぞれの優位代謝別にGlycolysis拮抗薬(2-DGなど)、ミトコンドリア拮抗薬(ミトコンドリア呼吸:Oligomycin, Rotenone, Antimycin, Phenforminなど)の単剤での抗がん作用を評価する。抗がん剤によりGlycolysis型からOXPHOS型に変化して耐性を獲得することが先の実験で判明している細胞株があれば抗がん剤とミトコンドリア拮抗薬の併用により抗がん作用の増強や耐性細胞出現の減少が認められるかを検討する。
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