研究課題/領域番号 |
18H06243
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藏澄 宏之 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50645116)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | CDCs / エクソソーム / 低酸素プレコンディショニング / 虚血性心疾患 |
研究実績の概要 |
治療手段が進歩し、急性冠症候群の急性期死亡率は減少したが、慢性心不全への移行が増加した。慢性期リモデリングを抑制する為、急性期に介入して心筋障害を軽減する新たな治療方法が模索されている。その候補の一つとして心筋幹細胞(cardiosphre-derived cell (CDC))移植が挙げられる。既に自家心筋幹細胞移植による心機能改善が報告されているが、細胞の準備に要す時間やコストが問題となり普及に至っていない。他家移植においては同様の問題に加え、免疫による拒絶反応が問題になると予想される。 近年、幹細胞治療による効果の機序として移植細胞の生着よりむしろ、分泌される成長因子やエクソソームが注目されている。エクソソーム投与は免疫による拒絶反応を憂う必要がなく、凍結保存に安定だとされ、反復投与が可能であり、次世代の革新的な治療方法として注目されている。 本研究の目的は、CDC由来エクソソームを使用した虚血性心疾患や慢性心不全に対する新規治療法を開発することである。当研究室はこれまで、低酸素プレコンディショニングが幹細胞移植の心筋保護効果を向上させることを明らかにしてきた。 本研究ではまず、低酸素プレコンディショニングでCDCを刺激し、エクソソーム分泌機構が活性化するか否かを検証する。また、エクソソームの内容についても解析する。続いてこのエクソソームを心筋梗塞後心不全モデルの小動物に投与し、更なる心機能改善効果が得られるか否かを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
a.マウス心筋幹細胞の単離とエクソソームの精製:マウスCDCsを採取しFACS 解析でCD105・CD90・c-kit の発現を検討した。CDCs シートを作製し、低酸素プレコンディショニング法と通常培養で培養した、それぞれの培養上清からエクソソームを単離し、タンパクなどを抽出し解析している。期待通り、低酸素プレコンディショニングにより、エクソソームのマーカーであるCD63, CD81は増加し、エクソソーム合成・分泌の増加が示唆された。 b.マウス急性心筋梗塞モデルにおけるCDCs エクソソーム治療効果の検証:動物実験施設においてマウスの蟯虫感染問題が発生し、動物の移動・搬入が制限された。このため、心エコーでの評価・心筋梗塞モデルの作成などの実験が遅れている。また、個体間で差が少ない心筋梗塞モデルの作成を目指しているが、均一な手術手技の習得に時間がかかっており、他の心不全モデルの作成も検討している。
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今後の研究の推進方策 |
心疾患に対する心筋幹細胞移植において、移植細胞の生着・生存は稀であることが知られている。加えて最近、心筋保護効果の大部分は分泌される成長因子やエクソソームに依存するという報告が相次いでいる。エクソソームはマクロファージや線維芽細胞など他の細胞種に取り込まれ、様々な効果を発揮するとされているが、不明なことは多い。 本研究では、エクソソームの内容を解析するに留まらず、マクロファージなど他の細胞種への取り込み、作用などへ解析を広げることを検討している。
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