研究課題/領域番号 |
18H06246
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮田 辰徳 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (80594887)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | ミニチュアヒト人工肝臓 / 脱細胞鋳型肝臓 / ヒト初代培養肝細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ラット脱細胞肝臓をヒト由来肝細胞によって置換したミニチュアヒト人工肝臓を創成し、薬剤ex-vivoスクリーニングツールとしての可能性を評価することである。H30年度の研究計画は、ヒトミニチュア肝臓の創生及びヒト肝細胞の取得であった。以下、それぞれの進捗状況について述べる。
ヒトミニチュア肝臓の創生:腹腔内麻酔による全身麻酔下に、6~8週齢のWistarラットから肝右葉を摘出し、還流システム内で門脈から4%Triton-X100を3時間還流させ、ラット肝の脱細胞を行った。本脱細胞肝は、精緻な脈管構造を維持した脱細胞鋳型肝臓であることを血管内染色により確認した。次に、ヒトミニチュアex-vivoモデルに用いる閉鎖型循環回路を作成した。ここでPreliminaryな実験として、本回路にラット全肝をはめ込み、酸素富化の有無、培地へのラット血液添加の有無(培地と1対1希釈)の条件下で、肝細胞障害抑制の観点から最も優れた循環条件を探索した。結果、酸素富化有り、血液添加有りで肝細胞障害が抑制されることをH&E染色で確認した。よって、ヒトミニチュアex-vivoモデルに用いる循環回路には、酸素富化装置である人工鼻を組み入れた。
ヒト肝細胞の取得:当院倫理委員会の承認のもと、患者からインフォームド・コンセントを得て、ウイルス肝炎や肝硬変合併のない肝切除症例の切除標本非癌部より、トリプシンを添加したコラーゲナーゼ還流法を用いて生存率約80%と高いviabilityを維持したヒト初代培養肝細胞を得るプロトコールを確立した。背景肝によるviabilityの違いを検討したが、取得細胞数や生存率に明らかな差は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット脱細胞肝の取得や循環回路の組み立てまでは計画どおりに進んだが、循環培養回路の作成における効率的な培養条件の設定に時間を要した。酸素富化装置や培養液温度を変えての実験により予定より計画が遅れたと考えている。最終的にはex-vivo薬剤スクリーニングツールの確立を最終目標としていることから、ヒト循環と同等の条件に近づける必要があると考える。 また、ラット脱細胞右葉肝をヒト肝細胞に完全置換するには大量の肝細胞が必要である(5.0×10(6乗)~1.0×10(7乗)個)。しかしながら、今回行ったプロトコールでは一度に5.0×10(5乗)程度の肝細胞の肝細胞を得ることに留まったことから、さらなる効率的な肝細胞取得のプロトコールが必要である。したがって、ヒト肝細胞置換後のラット脱細胞右葉肝の作成が遅れており、その次の行程であるヒト肝癌株を摂取するまでに至らなかった。回路の作成、肝細胞の取得に関しては計画通りに進んだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度に確立した循環培養回路にヒト肝細胞を接種したラット脱肝細胞をセットし、経時的な肝障害や肝機能を評価する予定としている。可能な限りヒト循環条件と同等にできるよう、血液濃度、酸素飽和度、循環培養液の温度や循環スピードなどを設定し、肝障害や肝機能を評価する。肝細胞取得に関しては、今後、症例数を増やして再評価を行い、繊維化の強い肝においても十分な細胞取得が可能か引き続き検討を行う。また、薬剤ヒトミニチュア人工肝臓を得るためには5.0×10(6乗)~1.0×10(7乗)個の肝細胞が必要と見積もっている。現在の肝細胞取得プロトコールでは一度に5.0×10(5乗)程度であることから、より効率的なプロトコールへの改善または処理する肝容量を増やしての肝細胞取得を引き続き行う予定としている。
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