本研究の目的は、ラット脱細胞全肝をヒト肝細胞によって置換したミニチュアヒト人工肝臓を創成し、薬剤ex-vivoスクリーニングツールとしての可能性を評価することである。本研究の進捗及び実績について、①ヒトミニチュア肝臓の創生、②ヒト肝細胞の取得に分けそれぞれ述べる。
①ヒトミニチュア肝臓の創生: 6~8週齢のWistarラットから肝右葉を摘出し、門脈から4%Triton-X100を3時間還流させ、ラット肝の脱細胞を行った。本脱細胞肝は、精緻な脈管構造を維持した脱細胞鋳型肝臓であることを血管内染色により確認した。次に、ヒトミニチュアex-vivoモデルに用いる閉鎖型循環回路を作成した。本回路及びラット全肝を用いた予備実験で、酸素富化装置の有、培地へのラット血液添加の有(培地と1対1希釈)の条件下で肝細胞障害が抑制されることをH&E染色で確認したことから、ヒトミニチュア人工肝ex-vivoモデルに用いる循環回路には、酸素富化装置である人工鼻を組み入れた。
②ヒト肝細胞の取得:肝切除症例 (n=5)の切除標本非癌部より、トリプシン添加型コラーゲナーゼ還流法を用いてヒト肝細胞の取得を行った。取得細胞数は平均で450万個、生存率平均は71.9%とviabilityを維持したヒト初代培養肝細胞を得るプロトコールを確立した。各々のviabilityの違いを検討したところ生存率に明らかな差は認めなかったが、取得細胞数は100万から1500万個であり、症例毎のばらつきを認めた。ヒトミニチュア人工肝臓を得るためには500万~1000万個の肝細胞が必要と見積もっていることから、ex-vivoモデルに適応させるためには、より効率的なプロトコールの改善や症例の選択が必要であることに加え、用いる切除肝容量を増やしての効率的な肝細胞取得を引き続き行う予定としている。
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