研究課題/領域番号 |
18H06255
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
四道 玲奈 長崎大学, 病院(歯学系), 医員 (80827618)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | microRNA / Nanoball |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、機能性micro(mi)RNA搭載自己組織化ナノデバイス(Nanoball)、及びナノサイズ化人工骨材料を応用することで、局所で強い骨誘導性を発揮する新規遺伝子活性化基質(gene-activated matrix; GAM)を開発することである。Nanoballは、核酸キャリアとしての高分子ナノ材料にアニオン性高分子を配した新しい生体適合性デバイスであり、従来のカチオン性デバイスと比較して、低毒性・高効率に生体内の細胞へ遺伝子を送達できる。即ち、骨誘導や炎症抑制、血管形成などに関わる複数の遺伝子発現を制御するmiRNAのベクターとして、Nanoballを新規に応用し、同時にリン酸カルシウム(β-TCP)などのナノサイズ化粒子を組み込んだatelocollagenを人工骨基質に採用することで、骨再生局所に集積する細胞への遺伝子送達を高効率に成し得るGAMを開発する。 申請者らの以前からの研究成果より、pmiRNA20a搭載GAMが複数の遺伝子発現を制御することで優れた骨誘導能を発揮し得ることが示唆されている。本年度はpmiRNA20a搭載Nanoballの有用性について検討を行った。 骨再生局所でのNanoballの適用を企図しており、GAM移植部に集積する骨髄由来のMSCおよびマクロファージ、血管内皮細胞を遺伝子送達のターゲットとし、作製したNanoballの取り込み効率を評価した。遺伝子導入されたMSCにはそれ自身の骨芽細胞分化、及び周辺細胞への骨形成性蛋白の産生・分泌が認められた。一方で、移植後GAMに最初に集積する骨髄マクロファージについても、miRNA20a発現による貪食促進効果や血管内皮細胞との結合作用亢進による血管新生効果(Zhu et al, 2013)を期待し、pmiRNA20a搭載Nanoballを応用することの利点を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
pmiRNA20a搭載Nanoballの有用性について、培養細胞での機能解析およびラット頭蓋骨欠損へGAM移植実験により評価を行っている。GAM移植後に集積すると考えられる骨髄由来MSC及び、マクロファージ、血管内皮細胞をラット大腿骨より細胞の単離、培養、分化までの培養方法の確立、またそれぞれの細胞のNanoball取り込み効率が最適な条件を検討する必要があった。移植後GAMに最初に集積する骨髄マクロファージについて、miRNA20a発現による貪食促進効果や血管内皮細胞との結合作用亢進による血管新生効果が期待できた。MSCについてmiRNA20a発現による骨芽細胞文化促進効果が期待できた。 さらにNanoballを応用したGAMの開発を試みた。Nanoballを応用したGAMは、高濃度では静電気的に不安定で、atelocollagenの比率によりアニオン性高分子が維持できず期待される効果が得られない可能性が示唆された。そのため低毒性・高効率に生体内の細胞へ遺伝子を送達GAM作製方法の確立が必要であった。ラット頭蓋骨欠損部へのGAM移植後の評価では、Nanoballの比率により炎症反応などの有害事象が認められた。Nanoballの構成成分や配合比を変化させることで、為害性の少なく導入効率の高い最適な条件を探索する必要性がある。以上のような理由で、実験はやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、pmiRNA20a搭載Nanoballを組見込んだGAMの骨誘導性を検討し、このストラテジーの有用性について検討する。pmiRNA20aを直接組み込んだGAM、およびpBMP4を搭載したNanoballを組み込んだGAMについては、これまでに骨再生において一定の有用性を見出している。これらと比較することで、Nanoballベクター及びmiRNAの応用がpDNAの少量化に寄与するか評価を行う。 さらにNanoballの構成成分について検討を行う。カチオン性材料として既にNanoballでの有用性が示されているPEIおよびDGLを評価に用い、アニオン性材料として同様にγPGA、及び新規材料としてβ-TCPや骨表面に吸着するビスフォスフォネート(BP)を検討に用いる。これらのカチオン性とアニオン性の材料をN/P比8以上の様々な割合で構成した Nanoballについて、骨髄MSCとマクロファージへの遺伝子導入と細胞毒性の評価を行った上で、pmiRNA20aやpBMP4を搭載して移植実験を実施し、評価を行う。 これらに加えナノサイズサイズ粒子の基質応用を検討する。基質の基本形は、賦形性を与える意味もあり、β-TCP顆粒(150-500μm)と2%atelocollagenを混和の上、凍結乾燥したものを用いる。そのため、その中にβ-TCP顆粒の所定の最大径(径9mmの頭蓋骨欠損に対して20㎎)を超えないようにβ-TCPナノサイズ粒子(250-1000nm径:ArrowBone)を配合する。導入効率と賦形性の観点から、顆粒と粒子の配合比を変化させ、それにNanoballを組み込んで凍結乾燥してGAMを作製し、移植実験を実施することで、評価を行う。
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