研究課題/領域番号 |
18H06263
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
柴尾 俊輔 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50528792)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 脳神経外科手術 / 力触覚鑷子 / バイラテラル制御 / 硬さの可視化 / 血管拍動の検知 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は超微細な力触覚を医師に伝達することにより、経験や技量への依存度の小さな、正確・精密な繊細作業を行うための脳神経外科手術機器(鑷子、吸引管、穿刺機器、鉗子)の開発を行うこと、そして、非臨床実験によるPOC 獲得を達成し、脳神経手術用ハプティックデバイスの実用化を加速させることである。 力触覚通信技術を搭載した手術器具として力触覚鑷子一号機を作成した。この力触覚鑷子はボイスコイルモーター(VCM)を操作側と被操作側に搭載することで、バイラテラル制御によって2 つのVCM が相互に力と位置の情報を伝達する仕組みになっている。まず、力触覚鑷子においてVCMにバイラテラル制御が適応できるかどうか検証し、さらにスケーリング(力や位置の増幅や減衰)が可能であることを確認した。 続いて、硬さの可視化を検証した。脳のモデルとして豆腐を用いて、力触覚鑷子を豆腐内で閉じることで測定される位置と力のデータをグラフ化した。横軸を位置、縦軸を力として測定したデータをプロットした場合、描かれたグラフの傾きが硬さを表すこととなり硬さが可視化できた。また、木綿豆腐と絹豆腐の硬さの違いを判別できるかを検証した。木綿豆腐と絹豆腐それぞれの中で力触覚鑷子を閉じた際の位置と力のデータをプロットしたところ、木綿豆腐の方が傾きが大きい、つまり硬いという結果が得られた。 さらに、血管拍動の検知を検証するために血管拍動モデルを用いた。2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.4mmの血管拍動モデルにて、1Hzの脈動の検知が可能であったが、1mm以下の径ではうまく検知できなかった。 以上の結果から、力触覚鑷子にて対象物の硬さの識別が可能であること、2.0mm以上の血管拍動の検知が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験結果から、力触覚鑷子を使用して、硬さの可視化、硬さの判別、血管は駆動の検知が可能であることが示された。これらの成果はより実臨床での応用を意識した2号機を開発するにあたっての土台となるとともに、動物実験においても参考となる成果と考えられ順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在はより実臨床での応用を意識した力触覚鑷子として、軽量化、高精度、配線類の簡略化を重視した仕様となる2号機を作成している。先端は実際手術に使用するバイポーラーと同様の形状となっている。2号機についても1号機同様に硬さの識別、血管拍動の検知が可能かどうかについて検証を行う。さらには脳腫瘍モデルを使用して、正常脳と腫瘍との硬さの判別が可能かどうかの検証を行う。これらのデータを蓄積することで、正常脳と腫瘍を自動で判別する自動判別アルゴリズムの開発も視野に入れている。
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