研究課題/領域番号 |
18H06268
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
松浦 孝紀 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (90821679)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | オキシトシン / 慢性疼痛 / 神経可塑性 / フィードバックシステム |
研究実績の概要 |
オキシトシン(OXT)-mRFP1トランスジェニックラットを用いて、慢性疼痛ストレスモデルでの視床下部OXTニューロンにおける可塑性について検討した。方法としては、リウマチモデルの一つである結核殺菌を用いて、アジュバント関節炎ラットを作製した。、結核殺菌投与後14日目に、関節炎が発症しているのを関節炎スコアにて確認し、対照群である無治療群ラットならびにアジュバント関節炎ラットに対して、頸椎脱臼後に脳をすみやかに取り出し、脳スライス切片を作製し、ホールセル・パッチクランプ法を行った。人工脳脊髄液灌流下で、mRFP1で蛍光標識した視床下部OXTニューロンにおいて、自発性(興奮性・抑制性)シナプス応答(電流)を記録した。結果、アジュバント関節炎ラット群は、無治療群と比較すると、有意にに静止膜電位低下ならびに自発性興奮性シナプス電流の増加(左方移動)が認められた。つまり慢性疼痛モデルでのOXTニューロンは、興奮性のシナプスにより、発火しやすい状況であることが示唆された。次に、アジュバント関節炎ラットにおけるOXTニューロンのフィードバック・システムについて検討を行なった。OXTの受容体拮抗役薬であるL-368,899を用いて、自発性(興奮性・抑制)シナプス応答(電流)の変化を記録した。無治療群では、L-368,899還流下において有意な変化は認めなかったが、アジュバント関節炎ラット群においては、ベースラインと比較するよ興奮性シナプス電流は有意な上昇そして抑制性シナプス電流は有意な低下が認められた。つまり、アジュバント関節炎ラットの視床下部OXTニューロンは、放出したOXTを介して自ら興奮を抑え、抑制を増幅させる負のフィードバックシステムがあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度は、当初の研究計画を変更する必要性があったために遅れている点もあるが、概ね順調には進行している。変更箇所としては、得られたデータを下に、同分野の研究者のアドバイスを参考にし、実験内容を追加し、OXTニューロン自身が持つフィードバックシステムについても検討した。今年度も当初に計画した内容に沿って、研究を行っていく方針とする。得られた実験結果について、国内外の学会で発表し、同時に英文論文についても執筆していく。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、慢性疼痛モデルラットでの視床下部OXTニューロンの神経の可塑性について示した。今後も引き続きOXTニューロン自身が持つ神経の可塑性ならびにOXTが及ぼす神経細胞に与える可塑性について検討していく。方法としては、スライスでのホールセルパッチクランプ法にて刺激電極を使用し、誘発性興奮性シナプス電流を記録し、神経の可塑性に及ぼす細胞内シグナルについて検討していく。神経の可塑性については、長期増強(LTP)システムについて着目する。LTPは過去の報告を引用し、Pairing-protocol等の刺激を用い、神経細胞にLTP を誘発させる。誘発性興奮性シナプス電流を記録・解析することで、OXTニューロン自身が持つLTPメカニズム、またOXTが及ぼす他の神経細胞領域(前部帯状回・扁桃体)のLTPついて検討していく予定である。また同時に並行して、in vitroでの行動学実験についても進めていく方針とする。脳内の各領域にマイクロインジェクションを行い、行動変容について評価する。疼痛閾値については von Frey や Hot Plate テスト等を行い、不安行動の評価については、高架式十字迷路等にて不安行動について評価する予定である。
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