研究課題/領域番号 |
18H06273
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大石 修史 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (50822532)
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研究期間 (年度) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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キーワード | 矯正歯科 / CBCT / 上顎洞 / 歯根吸収 / 骨再生医療 |
研究実績の概要 |
研究の全体構想は『骨欠損部位における歯根吸収を伴わない歯の安全な移動方法の確立』を目的とする。本研究課題の具体的な目的は『上顎洞を介した歯の移動の評価』および『骨再生医療を利用した歯の移動方法の確立』とし、基礎・臨床研究からアプ ローチし両分野で得られた結果を包括的に評価することである。 1、現在まで基礎研究としては、ラットを使用し矯正学的歯の移動(Orthodontic tooth movement: OTM)モデルの作製を行ってきた。歯の近遠心方向へのOTMモデルの作製は完了し、Micro CTによる骨微細構造解析や歯根周囲組織の生化学的解析・組織学的解析を行っている。良好な結果が得られていることから、その手技を応用し上顎洞側へのOTMモデルの作製を検討している。 2、臨床研究としては、矯正歯科外来受診者の診断用資料として使用されるcone beam CT(CBCT)の蓄積および解析を行っている。被験者CBCTデータから、矯正歯科治療における歯根吸収の現状の把握と上顎洞底と歯根の関係の分類基準の作製を行っている。現在までに術前資料として301名のCBCT画像を解析し、4000本を超える歯根について上顎洞底との関連を検討した。この内容は論文としてまとめ現在投稿中である。 3、上記内容と平行し患者データの蓄積を行っており、矯正治療前だけでなく治療後の資料も集まってきている。これら資料から得られる患者の3次元データ解析を行い、歯の移動パタンと歯根吸収の関係を明らかにする。 4、基礎および臨床研究から得られた結果を相互にフィードバックし包括的に評価を行っており、矯正歯科臨床における歯の移動に伴う医原性歯根吸収リスクを評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
基礎研究において、当初の研究計画では矯正学的歯の移動(Orthodontic tooth movement: OTM)モデルの作製に時間を要すると考えていた。しかし、現在までに近遠心的OTMモデルの作製方法を確立し、骨微細構造解析、組織学的解析、生化学的解析を行うことができている。最終的には上顎洞側への歯を移動させるOTMモデル作製を目標としているが、パイロット実験として近遠心的OTMモデルにより得られた結果は今後の研究に重要な役割を果たすと考えている。 また臨床研究においても、当初の計画よりサンプル数を増やす事ができ、月に20~30名程度のデータ蓄積を継続している。本研究では対象となる被験者数が大きいため、研究データを管理するシステムの構築も必要であった。倫理審査の申請、患者説明用のマニュアル作成、撮影方法等の管理システムも現在までに構築することができた。矯正治療前のデータでは論文という形に既にまとまり、現在アメリカおよびヨーロッパの歯科雑誌へ複数投稿している。また、矯正治療後の患者データ収集も平行して行っており、順次N数が増えてきている。 以上のように、基礎研究および臨床研究の両分野において当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究は、上顎洞側へのOTMモデルを作製し、歯の移動後における歯根吸収および歯根周囲組織の評価を行う。パイロット実験を参考に、歯牙の移動の為に与える力の強さ、週齢、評価方法の検討を行っていく。具体的にはWistar系雄性ラット用い無作為に対照群、上顎臼歯を上顎洞側へ10gfで移動する群(Light force群)、30gfで移動する群(Heavy force群)の3群に分ける。骨のリモデリングおよび歯根吸収を評価するため、Micro CTによる骨微細構造解析を行う。 最終的には上顎洞などの骨欠損部位に対し、医療用骨補填材を使用した骨再生医療技術を応用し、矯正治療における歯の安全な移動の新規技術の確立を目的としている。 臨床研究においては、矯正歯科治療前後のCBCT画像を3次元的に重ね合わせ、治療内容および歯根への影響を精査する。現在まではレントゲンフィルムによる2次元的評価が主流であるため、3次元的重ね合わせから得られる所見は今後の治療に貢献できると考えられる。また患者CBCTデータ、治療内容および治療結果のデータベース作製・蓄積は前年度に続き、継続的に行っていく。 上記で得られた結果は、基礎・臨床ともに重要な意味を持つが、より包括的な評価を行うために基礎研究および臨床研究の相互フィードバックを行う。これらの研究内容は海外学会を中心に発表を行う予定であり、また論文として海外雑誌へ投稿する予定である。
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