ARID1A (AT-rich interacting domain 1A)はクロマチン再構成因子複合体のサブユニットの一つで、クロマチンの構造を変化させることにより転写活性を制御するとされている。ARID1A遺伝子は卵巣明細胞癌、子宮内膜癌、胃癌などで高頻度に変異を認め、ARID1A遺伝子変異は多くのがんで腫瘍促進的に働くとされている。しかしながら、多くのがんでARID1A遺伝子群および関連分子の検討がなされてきものの、扁平上皮癌、特に口腔癌においてはこれらの報告は極端に少ない。そこで我々は、口腔癌細胞株において、cDNAマイクロアレイによる遺伝子の解析をおこないARID1Aに関連する遺伝子の候補を挙げることを試みた。 令和1年度の研究において、cDNA マイクロアレイの解析結果から、2倍以上の発現があった遺伝子を6つ検出した(CXCL1、OR7E91P、FUT3、FAM222B、TGFB2、JARID2)。また、CXCL1においては、RT-PCRにおいても有意な発現の増加を認めた。これらの結果から当院の口腔癌手術材料を用いてCXCL1の免疫染色をおこなったところ、染色標本の5/12で陽性像を認めた。今後、染色標本を増やし、染色部の局在および臨床病理学的所因子との検討をおこなう予定となっている。 これらの結果を学会で発表した。今後さらに発展すると思われるARID1Aの分野において、口腔癌における候補遺伝子を解析することは口腔癌の病態解明に有益なものとなると考える。
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