研究実績の概要 |
本研究は、歯周病とCKDの相互関連を解明するためPG-LPSによる腎臓組織の遺伝子発現変化に関与したエピジェネティック修飾について解析を行う。これまでPG-LPSによる腎臓の遺伝子発現変化を観察した報告は僅かであり(Harada et al., 2018)、この時のエピジェネティクス変化を観察した報告はみられない。このことから、本研究は極めて独創的であり、CDKの発症に歯周病原菌が関与していることを示す強く示唆するデータを示すものとなる。またエピジェネティック修飾は可逆性であるために、治療のターゲットとしての新たなデータを提供するものである。当該年度では、歯周病原菌の慢性腎臓病の発症に関わる遺伝子発現の解析および腎臓の組織学的評価を行った。C57BL/6Jマウスおよび老化促進モデルマウス(SAMP)に5 mg/kgのPG-LPSを84時間毎に一度腹腔内に反復投与し、3か月間飼育した。その後腎臓を摘出し、RNAおよびDNAサンプルを抽出した。 腎組織の病理組織学的評価: 得られたサンプルから組織切片を作成し、HE、PAS、鍍銀染色を用いて腎炎に関する組織学的な評価を行った。また、その評価項目を点数化し、定量化を試みた。この評価の値が高値であれば、より強く炎症が起きていることになる。結果として、LPSを投与したc57BL/6JおよびSAMPではそれぞれのコントロール群に比べて腎炎を疑わせる所見が有意に高かった。また、LPS投与群ではC57BL/6Jに比べ、SAMPでさらに腎炎を疑わせる病理組織学的評価が高値であったが、有意差は見られなかった。 また、LPSの受容体であるTLR-2およびTLR-4を標的とした免疫組織学的染色を行った。TLR-2に関しては、c57BL/6JおよびSAMPの実験群およびコントロール群いずれも陰性であった。TLR-4に関しては、c57BL/6JおよびSAMPの実験群において尿細管に陽性であった。このことからLPSは糸球体のみならず、尿細管にも作用し、腎臓の炎症を促進していることが明らかになった。
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