研究課題
歯髄の炎症性反応は、血流の増加、血管透過性の亢進により組織圧を増加させる。炎症発生時における歯髄内圧の上昇は歯髄に分布するC ニューロンを圧迫し、機械受容器を活性化することで、歯髄炎による二次痛を誘発する。しかし歯髄内圧増加による圧力・機械刺激受容機構、受容体分布や活性化機構の詳細は分かっていない。そこで本研究では歯髄に分布する小型三叉神経節ニューロン(C ニューロン)を逆行性トレーサーで同定し、Isolectin B4(IB4)結合の有無によって非ペプチド性・ペプチド性C ニューロンを特定、これらに直接機械刺激を加えた時の細胞膜電流を計測することで、ニューロンの機械受容特性について検討し、歯髄炎の疼痛発生メカニズムの解明と、その疼痛制御方策の検討を行うこととした。パッチクランプ法を用いて三叉神経節細胞の細胞体を電気生理学的に2種類に分類し、三叉神経節細胞内のそれぞれのニューロンに直接機械刺激を行うと、いずれも特徴的な二相性の機械刺激誘発性内向き電流の波形が観察された。二相性の直接機械刺激誘発性の内向き電流は一過性の速い内向き電流を示す第Ⅰ相と続く緩徐な内向き電流を示す第Ⅱ相で構成されていた。三叉神経節細胞に膜伸展受容チャネルのブロッカーであるGa3+存在下に直接機械刺激を行ったところ、三叉神経節細胞内の短い持続時間を有する内向き電流を示すニューロンはその応答が抑制された。一方で長い持続時間を有する内向き電流を示すニューロンにおいては有意な差はみられなかった。
3: やや遅れている
三叉神経節細胞内に存在するニューロンをパッチクランプ法を用いNa+電流持続時間の差で分類した。あるニューロン群はNa+電流持続時間が短く、対して他のニューロン群は長かった。それぞれのニューロンの細胞体に直接機械刺激を加えると特徴的な内向き電流が計測された。膜伸展受容チャネル(stretch activated channel)のブロッカーであるGd3+存在下に同様の実験を行うと長いNa+電流持続時間を有するニューロン群では直接機械刺激による内向き電流はGd3+感受性を示さなかったが、短いNa+電流持続時間を有するニューロン群ではGa3+感受性を示した。しかし、現在の実験では三叉神経節細胞すべてを検討しているため、歯髄に実際に分布している三叉神経節細胞のみの機械刺激感受性とその特性を検討しているとはいいがたい。そのため、今後申請のように歯髄に分布する三叉神経節細胞を同定し、その機械受容性の検討を行う必要がある。今後、逆行性トレーサーを用いて三叉神経節細胞内の歯髄特異的に分布するニューロンの同定を行う必要がある。
今後は、三叉神経節ニューロンを逆行性にトレースすることで歯髄に分布する三叉神経ニューロンを同定する。パッチクランプ法を用いNa+電流持続時間によってその電気生理学的特性の違いからニューロンを分類する。また、歯髄分布CニューロンについてIB4陽性反応からこれを非ペプチド性・ぺプチド性に分類し機械刺激感受性の解析を行う。それぞれについて各種機械刺激受容チャネルの阻害薬を用い機械刺激受容機構の違いを比較検討する。その後、免疫染色を用いて機械受容に関連する受容体の特定と周囲の神経細胞との連絡機構について検討したい。
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